先輩の努力に傷を付けたくない

「三浦さんがいてくれたおかげで、現場の男の人たちが『先輩みたいに頑張って』と言ってくれて、すんなりと受け入れてもらえました。仕事には厳しい方でしたが、『男と同じ仕事ができるのか?』という視線を跳ね返すために必死で頑張ってきた話を聞いて、先輩の努力に泥を塗りたくないと思うようになりましたね」

山仕事の現場には、実際の切り出し作業や重機の操作を行う「現業」の職員がいる。現在、平取事務所に所属しているのは10人で、30~60代の「大先輩」ばかりだ。

彼らのなかには、10代の頃から三井物産の森の管理に携わり、山を知り尽くしている人もいる。まさに山の職人である。

そんなベテランを相手に、細島さんたちは現場作業を監督する立場にある。しかし、伐採や植林の手順のことで激しい議論が起こることもある。

「意見の対立があったとき、気をつけているのは、誰かに偏って話を聞くのではなく、平等に話を聞くこと。そして最終的には、会社の方針に照らして最適な方法を示して、お願いすることですね」

入社から5年目。現場での経験を重ねるにつれて、林業の面白さが実感できるようになってきたと細島さんは言う。

「木は手入れの仕方1つで、育ち方に変化が生まれます。用途に合った木材を提供していくために、世代を超えて山を守り、木を育んでいくことがこの仕事の醍醐味(だいごみ)。私はまだ北海道の山しか知りませんが、本州では地形も違うし、木の育て方も変わると聞いています。ここで経験を積んで、全国の山で働けるようになるのが楽しみです」

写真=ほかりてつや