「テックマスターズ」の日本代表に選ばれる
数カ月の研修期間を終えると、新人も一人で作業を担うようになる。少しずつ任せてもらえる仕事も増え、成績として個々の工賃売り上げが張り出されると、彼女は整備士という仕事にやりがいを抱くようになっていった。
「月々の工賃売り上げが増えると、目に見えて自分の成長がわかります。入社5カ月目に200万円を超えたときは、ほめられました。それで『もう一年、頑張ろう』と思うようになったんです」
千葉支店で5年間を過ごした後、初めての異動で配属されたのが現在の成東支店だった。
そんな新海さんが次の目標に掲げるのは、ダイムラー社が主催する「テックマスターズ」という整備士のコンテストで優勝することだ。昨年はその予選を突破し、日本代表の一人に選ばれ、ドイツのシュツットガルトで開かれる「グローバル・テックマスターズ」に出場した。世界中の販売店から選りすぐりの整備士が集まる大会で、3位の成績を収めた。今回はクルマの基本的な点検を行う「メンテナンス・テクニシャン部門」での出場だったが、いずれはセンサーや制御系といった複雑なシステムを担当する「システム・テクニシャン部門」に挑戦したいと考えている。
成東支店に来て3年目。新海さんはいま、新人を指導する立場にもなりつつある。大会に再び出場するという目標を抱くと同時に、「自分自身が育ててもらったように、後輩をきちんと指導できるようになりたい」と思うようにもなってきた。
「ベテランの整備士のなかには、クルマを一目見ただけで、お客さまの運転のクセがわかる人もいます。そんな人の仕事を目の当たりにすると、とても刺激を受けます。私も先輩たちのように後輩を育てながら、影響を与えられる整備士になっていきたいです」
撮影=吉澤健太