「もう肩書きはいらない」

これまでに私は、オペラや演劇の舞台衣装といったファッションをはじめ、国連代表部大使公邸での和食レセプションのプロデュース(14年)、インドやブラジル、沖縄・琉球海炎祭での花火のデザインなどをしてきました。すべて私一人ではできない大変なことばかりです。やっぱり出会いとコミュニケーションがとても大切ですよね。最終的にはコンピュータじゃなく、人と人がつくるんですから。

だから私は思いがけない仕事のオファーが来たときも、すぐに断ったりはしないで、まずは受けます。日経新聞の夕刊に週1回書いているコラムも、TBSラジオのパーソナリティーもそう。だっていろいろ考えたうえで私に言ってきているわけだから、意味があるはずでしょう?

受けてから、判断したり悩んだりします。感覚としては、サッと飛びつくよりも、「できるかな?」と不安げに相談しながら進めていくのが一番いいですね。不思議と「大丈夫かな、私にできるかな」と最初に思ったものほど、ちゃんと続いていくの。面白いものですね。

肩書きには自分で自分を狭めてしまうところがあるの。とはいえ最初は何かひとつ、自分の生き方を持っていないと人は認めないし前へ進めないという面もある。難しいところね。考え方としては、偏見を持たないでいること、人を年齢や肩書きだけで見ないことがとても大切よ。できればある程度になったら、肩書きはとったほうがいいわね。肩書きを言わなくても通るようにしなきゃ。近ごろ私は「もう肩書きはいらない」といつも言っています(笑)。

コシノジュンコ
大阪府岸和田生まれ。文化服装学院デザイン科在学中、19歳という若さで装苑賞を史上最年少受賞。1978~2000年のパリ・コレクション参加のほか、世界各地でファッションショーを開催。オペラやブロードウェーミュージカルをはじめとする舞台衣装、スポーツユニホームからインテリアデザイン、花火デザインまで、幅広く活躍する。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員。TBSラジオ「コシノジュンコMASACA」でラジオパーソナリティーも務める。

編集=干川美奈子 文=あつた美希(CSホロス) 写真=干川 修