「いまさら」と感じる世代はどうしたらいいですか?

▼60代になってもチャレンジはできます

結婚退職が当然の時代に採用されていると、どうせ数年で辞めるから、とキャリアの展望がないのは当たり前かもしれません。

そういう人たちに伝えたいのは、人は何歳になっても成長できるということです。人を成長させるものは、仕事体験そのもの。自分のキャパシティー内でできる仕事を何年、何十年続けていても成長しません。大きな仕事を与えられ、上司や先輩にサポートしてもらいつつやり遂げると、その瞬間、自分が一回り大きくなっている。

私自身、60代になってから資生堂の副社長になり、初めてリスクマネジメントを担当しました。正直に言うと苦手意識があったんですね。ところがそこに東日本大震災が起きた。通常の仕事をしている時間がなく、対策本部の業務に専念しました。連絡が取れない社員の安否確認から始まり……と苦手だと思う暇もありませんでした。あのような災害は二度と起きてほしくないですが、リスクマネジメントに自信が持て、何歳になっても成長できると感じました。

会社も、キャリアの展望を持てない人に対して、期待していると伝える必要があります。そして、いまの仕事より少し大きめの仕事をやらせるといいと思います。女性たちは一斉には変わらないかもしれませんが、何人かが変われば、それを見て自分も変われると思う人が増えるのではないでしょうか。

▼教えて岩田さん! 女性が管理職になることにどんな意味がある?

男性と女性は、違った価値観や経験、情報を持っています。生え抜きの男性だけで議論すると、持っている情報も価値観も同じで、話し合わなくても結論はわかっているようなものです。私が資生堂の役員になったとき、女性かつ中途採用だったので、その異質性が二重でした。

管理職や役員になると、会議で女性が1人だけということは多いと思います。私が心掛けていたのは、「これはちょっとおかしいんじゃないか」と思ったら必ずそれを言うこと。それが役割だと思っていました。同時に、反対意見はポジティブに、論理的に言うこと、そして代替案も示すことです。

もう一つ、女性が役職につけば、後輩たちの育成にもつながります。

2ページ目のグラフのように、管理職になりたいと答える女性はまだ少ない。そして、女性を育てる管理職の側にも課題があることが調査でわかりました。

管理職に、「あなたは男性部下と女性部下、同じように育成していますか」と聞きました。すると正直に「男性のほうを一生懸命、育成している」と答える方が多いのです。理由の多くが、「女性は継続してくれるかわからない」。上司は男女同じように育成しているつもりでも、「育ててもらっていない」と感じる女性が多いこともわかっています。女性たちも上司も、意識を変えることが第一歩だと思います。
岩田喜美枝
公益財団法人 21世紀職業財団会長。1947年香川県生まれ。71年労働省(当時)入省。女性労働問題や国際労働問題を担当し、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長を最後に、2003年退官。同年に資生堂に常勤顧問として入社。取締役常務などを経て08年代表取締役副社長に就任。財団会長は12年7月から。現在は3社の社外取締役のほか、男女共同参画会議議員、東京都監査委員、経済同友会幹事なども務める。2児の母。

構成=中野円佳 撮影=中村年孝