データ分析から遭難者の救助まで

現在では、数字や文字のデータ解析だけでなく、画像判別能力も向上しています。たとえば、人型ロボットのPepperは、クラウドAIを搭載し、微妙な人間の表情を読み取って反応する、感情ロボットとして接客などに使われています。

一方で、高度な画像認識で、医療の場で診断に応用したり、交通渋滞の緩和のための予測や、衛星写真から気象条件や地勢の状況を判断して効率的な農地の利用を考えたりするAIもあります。さらに、静止画だけでなく、「自動車など実際に動いているものも認識させる研究が進んでいます」(杉村さん)。自動車の運転支援に応用したり、監視システムを強化し、さらに防犯に役立てたりできます。

二足歩行可能なロボット「アトラス」。(ロイター/アフロ=写真)

行動するAIやロボットも研究が進んでいます。「昔は二足歩行さえ難しかったのですが、今は、雪道を歩くロボットもあります」(杉村さん)。雪山で遭難者を見つけるなどのほか、介護や医療の現場でも人手不足の解消につながります。このようにデータの解析から行動にまで、AIを応用する可能性が広がっています。

AIが人間の仕事を奪うという脅威論もありますが、AIにも得手不得手があります。ルールの決まったゲーム、データ解析や画像認識、パターン認識などは得意ですが、AIは人間が普通に持つ一般常識を持つには至っていません。また予測不可能な事態の対処、ゼロからものをつくることも苦手です。ですから、たとえば完全にAIだけの企業経営や、芸術家として活躍するのは、現時点では難しいと考えられます。

AIの得意分野で人間と協業していく場面が広がっていくでしょう。

ロイター/アフロ=写真