▼女性の働き方と諸問題を知る
『働く女子の運命』濱口桂一郎/文春新書
日本では、社員として異動や転勤を受け入れ定年まで企業に尽くすという「メンバーシップ型」の働き方ができるかが査定基準になりがち。仕事がいくらできても、育児や出産といった「リスク」を抱える女性が活躍しにくいという日本型雇用の歴史をたどる。社会構造を知るのに必読。
『「育休世代」のジレンマ』中野円佳/光文社新書
15人の総合職女性へのインタビューから、働きやすさよりもやりがいを重視して職場を選び、自分と同じハードワーカーな夫と結婚すると、育児と仕事の両立ができなくなり、結果的に意欲のある女性ほど出産で仕事をやめてしまう傾向にあるという、逆説的な事実を浮かび上がらせる。
『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』筒井淳也/中公新書
豊富なデータやスウェーデンとアメリカという働く女性を支援する国の施策を比較し、その方法を単純に日本に適用するのではなく、女性が出産後も働き続けられる社会にするにはどうすればよいか、長時間労働が前提になっている従来の日本的な働き方を見直す必要に言及した本。
『女性はなぜ活躍できないのか』大沢真知子/東洋経済新報社
やや専門的な本。とくに高学歴女性の働きにくさにも焦点を当てている。調査やインタビューをもとにした分析で、職場の意識や働き方を変えることの重要性や、「女性は昇進意欲に乏しい」等の先入観、企業の思い込みが女性人材の浪費をもたらしていると指摘。
▼妊娠、出産について知る
『私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存』香川則子/WAVE出版
卵子凍結研究のプロフェッショナルによる、不妊治療と卵子凍結保存についての概説書。かかる費用や期間、採取方法、高齢出産の成功率の低さなどについて詳しく知るための本。産む、産まないにかかわらず、選択肢やそれについての最先端の正確な知識はあるに越したことはない。
國學院大學経済学部教授。専門は文化社会学、ジェンダー論。1970年生まれ。『シングルマザーの貧困』(光文社)、『「居場所」のない男、「時間」がない女』(日本経済新聞出版社)など著書多数。詩人として中原中也賞など受賞。
奥田由意=構成