学会がしぶしぶ承認

結婚、仕事などの事情による社会的な未授精卵子凍結・保存について、2013年11月15日、日本生殖医学会は実施を認めるガイドラインを総会で承認した。ただこれはすでに一部の施設で行われており、学会は、需要があるという現実の前に、「しぶしぶ認めた」のである。

学会は、「あるべき卵子老化対策とは、できるだけ若く妊娠することだ」というスタンスを崩していない。

ガイドラインは、前文に「凍結・保存の実施を推奨するものではない」と明記されており、行う場合も「40歳以上の採卵」と「45歳以上の使用」は推奨しないとしている。あまりにも有効性の低い凍結保存や超高齢出産が増えないようにけん制しているのだ。

インフォームドコンセント体制の義務付けもなされ、今後は、日本産科婦人科学会において実施施設の基準も示していきたいという。

確かに、未授精卵子凍結は特殊な選択肢と考えておくのが現実的だろう。卵子老化で妊娠できない事態の保険にはなるが、負担が大きく、本当に役立つ例は少ない。採卵・凍結保存から顕微授精まで施設によっては100万円かそれ以上のお金がかかるし、それをしてみたところで妊娠するために1番重要なパートナーの問題は何ら解決されない。

卵子老化ばやりの弊害

卵子が若ければ高齢出産でも安心だという空気が広がっているが、妊娠すれば子宮やその他の臓器、血管などが若さを問われる。妊娠中、母体は血液を普段の1.4倍にまで増やして胎児を育てる。卵子老化ばやりの中で、最近、母体が妊娠に耐えられなかった場合の怖さが忘れられている気もする。

凍結卵子の保管料も高い。妊娠率は全年齢で見て約1割とされているので卵子は10個は凍結したいが、それには年間10~20万円かかり、それを毎年払い続けることになる。これは若い人にとっては経済的負担が重い。そもそも若くて健康な人なら、自然妊娠で妊娠する人の方がずっと多いのだから、大半の人が凍結卵子は要らない。

そのため、凍結する人は妊娠に不安が強まる30代後半以上が多いが、その年齢層では結婚する可能性も、いい卵子が多数採れる確率も高くはない。さらに「卵子はとってある」という安心感でのんびりしてしまうと出産率はもっと低くなる。