▼ユースデモクラシー推進機構 仁木崇嗣さんから
提言:独立自尊の精神の消失が、将来世代にツケをまわす政治を許している

選挙権年齢が18歳に引き下げられたことは大きな前進と言えますが、「シルバーデモクラシー」の根本的な原因は、少子高齢化や投票率の低下といった社会的な変化ではなく、多くの有権者と政治家が民主主義の原点を忘れてしまったという内面的な老化にあるとみています。

欧米で生まれた「代表なくして課税なし」という財政民主主義の精神は、約150年前に福澤諭吉によって日本にもちこまれ、自由民権運動に影響を及ぼしたのち、人びとが議会開設を求める理由の一つとなりました。

現在の政府や地方自治体の財政規律の緩慢さからは、その記憶をうかがい知ることはできません。特に、独自の財政基盤が弱い地方自治体は、公債(将来世代へのツケ)だけでなく、国からの補助金や地方交付税交付金に大きく依存しているため、財政状況の悪化が住民の税負担増加に直接的に結びつかず、高齢者向けの歳出が際限なく増えていく仕組みを許しています。

このような「シルバーデモクラシー」の是正のために、「被選挙権年齢の引き下げ」や「インターネット投票方式」導入の議論が始まっていますが、より踏み込んで、議席数を世代別人口に応じて割り振る「世代別選挙区制」や、1人複数票を持つ「連記投票制」、子どもの票を親権者が代わりに投じる「ドメイン投票方式」、平均余命が長い若年者の一票の価値を高める「余命比例投票方式」なども含めた抜本的な制度改革の議論を深めていくべきです。

とりわけ、地方の自治権拡大の流れの中で、地方議員や首長の選出方法については、住民の意思に基づいた多様な制度を認めていくことも選択肢の一つでしょう。今こそ私たちは、先人たちが何のために民主政治を始めたのかを思い出す必要があるのではないでしょうか。

佐藤留美=構成 文=仁木崇嗣(提言) 市来朋久=撮影