気のきいた言葉を使いたいけれど、出てくるのはありふれた言葉ばかり。そんな悩みにコピーライターの尾形真理子さんがお答え。LUMINEのコピーを交えて、心に届く言葉の作り方をご紹介します。
尾形真理子
2001年博報堂入社。コピーライター、シニアディレクター。LUMINE、資生堂、日産自動車などの広告を担当。朝日広告賞グランプリほか受賞多数。10年、『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』で小説家デビュー。
「平凡な言い回し」を 「ささるフレーズ」に変える
言葉というのは、人となりを形成するものであり、無意識に身についているものです。たとえば自分の姿を動画で見たりすると、姿勢や歩き方に驚くことはありませんか。「わたし、こんな歩き方をするんだ!」って。言葉も同じ。自分では操れていると思っていても、それほど操れてはいないものです。まずは、その意識を持つことが出発点です。
コピーライターをしていると、“伝える”と“伝わる”の差を痛感させられます。広告のコピーは、企業からの一方的なメッセージであり、受け手に受け取りたいというモチベーションは皆無。そこには差があることを冷静に受け止めて、一方通行のメッセージの中に、いかに相手の心を動かす矢印をつくることができるか、そこがポイントになります。
相手を動かす言葉がどんな言葉かわからないという人は、自分に届くメールやSNSのメッセージの中から、受け取りやすいものが、なぜ受け取りやすいか、受け取りにくいものが、なぜ受け取りにくいのか、その理由を客観的に考えてみるとよいでしょう。受け取りにくい理由がわかれば、その言葉を避けるようにすればいいだけ。
言葉というのは、その人と切り離せないものです。同じ言葉でも使う人によって全く印象が変わります。言葉の扱い方に、その人のパーソナリティーがにじみでるのです。ですから“伝え方”の見本をトレースするのではなく、自分なりに伝わる方法や伝わる言葉というのを見つけていかないといけないだろうと思います。
言葉力を磨くためにはよい言葉に触れることが大切。周りを見渡すと、美しい言葉や面白い言葉を使っている人が必ずいますので、そういった人から学ぶということです。テレビや本の中でもいいです。そうするうちに、だんだんと奥行きのあるよい言葉が使えるようになってきます。それでも100パーセントは伝わらない、それが言葉なんだと私は認識しています。