安倍政権では「一億総活躍」の掛け声のもとで、女性や高齢者の活躍を推進。時代の流れを受けて、女性活躍に本腰を入れる企業も増えてきました。ただ、女性活躍を急速に進めたことで思わぬ「困った状況」も起きています。そんな企業にスポットを当ててみました。この領域に詳しい業界ウオッチャーの意見をもとにした「チェックリスト」つきです。
*『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『凄母(すごはは)』(東洋経済新報社)など、当事者にとっては耳が痛いキャリアの真実を発表し続ける佐藤留美さんからの情報をもとに構成
見栄えがよく見える数字にとにかくこだわる金融業界
金融系企業で女性管理職比率が急増しています。ただ、昔から金融系企業は、社外に出る数字をうまく整えることで定評がありました。
大学生の就職人気ランキングなどでは、「同業に負けてはいけない」というお達しが出ているメガバンクも少なくありません。複数の大学が連携する大きなサークルに飲料や菓子類などを付け届けして人気取りをしているとも聞きます。
事務職分野で女性管理職のインフレとバブル
女性管理職急増に関しても、かなり無茶な話を聞きました。そのいくつかを紹介します。
「たとえて言えば、女性管理職がインフレでバブル状態、といった感じですね。まず、女性管理職には、私のような課長補佐や係長・主任までも上げ底でカウントしています。それも、本来であれば管理職を置かなかった分野に、係長・主任・課長補佐をつくっています」(メガバンク勤務の30代後半の女性)
この銀行では、窓口、個人営業、個人融資、庶務、などいわゆる一般職が中心となる事務部門にまで、係長や主任、課長のイスを用意し、女性の管理職比率を上げているというのです。
「銀行の場合、外回りの法人融資は、かなり危険な仕事でもありました。たとえば返済が滞るような融資先からは資金の引き揚げをしなければならないし、新たな取引も謝絶(お断り)します。そうなると、相手は経営が破綻してしまうので、必死になります。それで、顧客先に拉致されるような、大変なことが起きるのです。だから慮りもあって、女性には危険が少ない窓口やミドル業務を任せていたのでしょう。男の人は危ないけど出世する仕事、女の人は安全な分、出世しない仕事と住み分けていたのを、一気に変えつつあります」(前出女性)