日本の企業は損をしています

【佐々木】でも、100歳まで生きるということが何となくわかっていても、実際にそれに合わせて仕事や人生の設計を考えられている人は少ないのが現状ですよね。

【グラットン】おっしゃる通りです。もう少し具体的に考えてみてはどうでしょうか。2つのとても興味深いトレンドがあります。1つは100年生きられるようになり、それを経済的に成り立たせるためには80歳ぐらいまで働かなければいけないという流れ。

2つ目は、前作『ワーク・シフト』の中で書いていますが、仕事自体も常に変わっているということです。たとえば人工知能に関して、日本の技術は最先端です。技術の進歩によって、この先、消滅していく職業もあるでしょう。人間にしかできない職業、あるいはロボットよりも人間のほうが得意な職業に就くために、いま始められることはあると思います。

【佐々木】日本ではそこまでの考え方のシフトがまだ始まっていません。グローバルで、もっと進んでいる事例はありますか。

【グラットン】グローバルで見ても、学校にだけ行く、仕事だけする、引退をして余暇だけを過ごすという3ステージ型の人生が終わったことは、頭では理解されてきていると思います。ただそれを実行できるかという問題に直面しています。

個人レベルでは、勉強をし直さなければいけないと考えている人は増えています。それから、いまやっている以外のやり方でお金を稼ぐ方法を身に付けなくてはならないということ。政府としては、教育の内容を考え直す。社会としても、たとえば60歳以上の人々を「余暇を過ごす人」などとステレオタイプで捉えないようにしていくべきだと思います。

私が教えているロンドン・ビジネススクールの学生は、45の国籍に及びます。ここでも100年ライフについて話し、学生にどんな家庭生活を送りたいかを聞いてみました。すると性別や国籍を問わず、8割の学生が、「共働きがいい」と答えました。ただ、それを実行していくには、まだ試行錯誤があるはずです。