いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。

▼東急電鉄 経営企画室経営戦略部 課長 辻 理絵さん
チームや他部署の力を最大限に借りて最適な判断に生かす

入社以来、鉄軌道事業や不動産事業ではなく、同社のグループ会社の増資や整理、コンプライアンス部門設立に関わる経営企画の仕事を中心に担当してきた。16年目に昇格。管理職への抵抗はなかったが、娘が幼く、夫が海外赴任したばかりで昇進試験を受けるか迷った。上司に「チーム全体でサポートする。仕事内容だけで決めてほしい」と言われ決心した。

辻 理絵●東急電鉄 経営企画室経営戦略部 課長。 1998年入社。グループ会社の再建や資産管理、リスクやコンプライアンス統括部門の立ち上げに関わり、2013年から現職。

男性が多い職場でも、長く在籍した部署で協力体制が整っており、管理職としてのやりにくさはなかった。取締役会に上げる議題の内容抽出など、より高度な判断が求められるが、社内外から資料や情報を集め、専門知識や多角的な視点が必要なのは役職につく前も同じ。「チームや他部署の力をいかに借りられるかが鍵」

子会社の売却など自分だけで判断できない業務を入社時から経験し、「詳しい人から教えてもらったり、他人の力を最大限に生かし、最適な判断を下せるような習慣が身についています。それが難度の高い意思決定をする立場になった今、役立っていると思います」。

管理職だからといってすべての業務を把握しているわけではない。情報を持っている部署にパイプがないときは、口添えしてもらう、根回しするなど、人に頼らなければひとりではなにもできないとわきまえることが重要だ。

それには他部署に積極的にものを尋ねられる雰囲気づくりが欠かせないが、「『お昼行く人、手を挙げて』と隣の部署の人と連れ立ってランチに行き、よもやま話をする。そんなささいなことの積み重ねです」。

チームの元気がないときには、努めて明るい声で挨拶したり、「あとちょっとがんばろう」と一声かけるだけでも随分空気が変わる。

人の力を借りることの重要性を知り、ささいなやりとりを蓄積することが高度な判断の助けとなるのだ。

▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!

《Before》先輩として接していた相手にどう接したらいいか戸惑った
自分よりも業務経験が豊富で、先輩として接してきた相手に上位職として接する機会も多くなり、管理職として、どのようにすればいいのか戸惑いがあった。


《After》「先輩として敬う」、「管理職として判断する」などけじめに気をつけた
業務キャリアという点では先輩で、力を借りることが多々ある。従来どおり敬意を持って接するというけじめと、管理職として自分が判断しなければならない場面でのけじめとのバランスに気をつけた。

山田 薫=撮影