▼明治大学教授北岡孝義さんから
提言:「一億総活躍社会」に、定年制廃止を盛り込んで!

「生涯現役社会」は、見方によっては、日本の近未来の姿といえるでしょう。年金は当てにできず、老後も働かなければ生活できない。そうした時代が来るということです。総務省の統計によれば、近年、高齢者の就業率が上昇し、働かないと生活できない高齢者も増えています。

老後も働くのがふつうなら、定年制は廃止されるべきです。高齢者の多くは、老後も、経験や技術が生かされる仕事を望んでいます。それが定年制で断ち切られるのですから、高齢者にとって酷ですし、国にとっても大きな損失だと思います。

定年になれば一斉に退職を強いられる定年制は、個性を無視した年齢による差別です。現に、アメリカやイギリスをはじめ、定年制廃止の国は増えています。

日本でも、定年制廃止に踏み切り、高齢者の特性を収益の向上に結び付けようと発想する企業が出ています。定年制を廃止すれば、雇用形態や賃金体系も含めて高齢者雇用のあり方を抜本的に見直すことになるでしょう。安倍首相の提唱する「一億総活躍社会」にも、定年制廃止を盛り込んでほしいものです。

我々自身もまた、働くことの意味を考え直してみましょう。働くことは辛いことだ、そう理解している人は多いのではないでしょうか。もちろん、辛い面もありますが、働くことによって幸せを実感できる面もあります。働く人たちが仕事を通じて幸せを実感できる職場は、企業の競争力の向上にもつながります。長時間労働などの過酷で余裕のない職場には、良い製品、良いサービスは生まれません。労働環境の改善は急務といえるでしょう。

「生涯現役社会」が、少子高齢化と不安定な年金制度を理由に、高齢者の働き手を増やすだけに終わらないよう、改革を注視していく必要があります。

市来朋久=撮影