買収されるほうの気持ちも分かった

キャッツカフェの社長をやりながら、やはりM&Aで経営することになった味噌田楽のお店や、ちゃんこ料理店の再建にも携わりました。そこにベーカリーショップの「モンタボー」が加わり、キャッツカフェと合わせて「スイートスタイル」という会社にし、社長を務めました。

手放せない仕事道具:愛用の手帳はA5サイズ。WISHリストには、8年越しのものも。

どんどん外食企業のM&Aをしてきましたから、そのころグループは外食も塾も1000店舗以上という数になっていました。ところがリーマンショックで外食産業も非常に厳しい時期を迎えます。そんなタイミングでNOVAを買収する話が来ましたから、財務上やむなく初めて会社を売却することになったのです。売却の対象になったのが、業績が好調だったスイートスタイルでした。

売却の相手は商社系ファンド。私は業務を引き継ぐため、入社して初めて自分の会社を離れ、売却先の会社に社長として半年間ほど出向することになりました。相手は外食店を買収・運営されるのが初めての経験だったこともあり、こちらの言うことに耳を傾けてもらえたと思います。キャッツカフェで私が失敗したように、現場に入ってみないと理想と現実のギャップはわかりません。

スイートスタイルの売却はすごくいい経験になりました。今まで買収するほうの立場しか知りませんでしたから。ちょっと辛いなとか悔しいなとか、買収される側の気持ちも理解できたと思います。M&Aの引き継ぎ作業が一段落したとき、稲吉から「どこに戻りたい」と聞かれました。希望を尋ねられることは入社して初めてのこと。希望通り教育の世界に戻してもらい、NOVAの受け入れ先となるジー・エデュケーション副社長となりました。