成年後見人の仕事を理解して欲しい

成年後見人による高齢者の財産の不正流用がたびたびニュースになり、親の財産管理を他人に任せるなんてことはできない……と成年後見制度のイメージはあまりよくないようです。しかし、ほとんどの成年後見人は不正をするどころか、本人の不利益にならないよう本人に成り代わり必死になって財産を守っていることを理解して欲しいのです。

私の親友とも呼べる友人は社会福祉士の資格を持ち、成年後見人になることを職業として、社会的弱者である認知症の方々を守っています。この友人がどんな仕事をしているのか、一例をあげましょう。

「私は80歳未婚女性の成年後見人になりました。かつてこの女性は母親と姉と暮らしていましたが、たて続けに亡くなり、相続の手続きをしていなかったので、成年後見人である私はその方のために母親と姉の財産相続手続きをすることになりました。また、本人が亡くなった場合も想定して、過去に遡って相続人を探しました。この女性は資産家で7000万円ほどの資産をお持ちですが、直系の子どもはなく、親戚には相続人になる対象者が37人もいました。やがては法定相続に基づき、女性の資産は相続人に分けることになります。そのような方が認知症になり、たった一人で福祉のお世話になっている……それが現代社会です」

成年後見人である友人は37名もの相続人一人一人に連絡をとって、状況を説明していました。中には後見人からの電話を不審に思う人や、財産がもらえると飛び上がって喜んだ人もいたとか。でも、親戚とはいえ会いたいという人は一人もいなかったそうです。このような作業は、やっぱりプロがしたほうが物事がスムーズに運びます。

友人は、現在、約20名の方々の成年後見人として、被後見人の財産管理と身上監護をしています。現代社会を象徴するように、中には生活保護の人や未婚で身寄りのない人もいて、そのような方からいただく報酬は微々たるものということも少なくありません。。でも頼りになるのは成年後見人のみ。友人は「プロ」としての自覚を持ち、毎日のように被後見人が入っている施設に行って手続きをしたり、家庭裁判所に出向き報告をしています。