ブルボンヌさん(女装パフォーマー)、光浦靖子さん(タレント)、松本晃さん(カルビー会長兼CEO)が、交代でお悩みに回答する本連載。仕事や私生活でモヤモヤしていることを一緒に解決してくれます。今回の回答者は松本晃さんです。
上司から、マネジャーにならないかと打診されていますが、一人でコツコツと積み上げる職人的な仕事しか経験がなく、不安です。私は昔から、ちょっと変わったものに惹かれたり、凝ったりするところがあります。こんな偏りのある性格は、マネジャーには不向きなのではないでしょうか。 [37歳・工業デザイン・匿名希望]
マネジャーは「自分が勝つ」ことが仕事ではない
変わってるからマネジメントができないなんてことはありません。
たとえば中日ドラゴンズのGM(ゼネラルマネジャー)、落合(博満)さん。
選手時代は、「他人のことなんか知ったこっちゃない」と好き勝手にやっていたけれど、監督になったら上手だったじゃないですか。
マネジャーというのは、自分が勝つのが仕事ではない。マネジメントとは、チームが勝って初めて自分が勝ったことになる。そういう当たり前のことを理解して、実践することです。要するに、「チームの成果」を出すこと。それに尽きます。
成果を出すためには、チームメンバーをちゃんとモチベート(動機づけ)して、インスパイア(鼓舞)して、チームとしてのアライメント(団結)をつくること。この3つを意識しながらやっていくことが基本です。そして、最終的に会社もしくは上司から期待された結果を出すこと。
ただ、人は自分のマネジメントが正しいと思って進んでいても、どこかで横道にそれたりします。それを軌道修正するために欠かせないのが、「良きメンター」です。
直属の上司である必要はないですよ。社外の人でもいいので、自分が「学びたいな」と思える人を探して、よく相談することです。
しかし、人に教わるばかりでなく、自ら勉強もしてほしいですね。学んで考える。考えて学ぶ。そして実践する。自分の頭を使うことが大事です。
たとえばインスパイアするためには、ほめることが非常に効果的です。だからマネジャーは、基本的にいつも激励してインスパイアする。9割ほめて、1割ぐらいちょっと注文をつけるくらいがちょうどいい。
こういうのはただのテクニックで、難しいことではありません。マネジメントをするのなら、そういうことぐらいは心得ておかないと。
自分がされたいことは人も同じなんですよ。人間は99%一緒ですからね。頭は1つだし、耳は2つ、口は1つでほとんど変わりません。
マネジャーというのは、なりたくてもなれない人が多くいます。人生は1回しかないんだから、新しいチャンスを恐れずに、ポジティブシンカーになればいいと思いますよ。失敗したら、また元の仕事に戻ればいいだけです。すべて、いい経験になりますよ。意外とうまいこといくかもしれませんしね。知識とスキルを学びながら、チャレンジをしてみてください。
【松本晃さんからのアドバイス】
1回しかない人生。チャンスを恐れずポジティブシンカーに。
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事に入社。ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長、同最高顧問などを経て、2009年よりカルビー代表取締役会長兼CEO。
構成=中津川詔子 撮影=遠藤素子