運命の出会いと思いもよらない事態の間で
カズコさんは、お見合いパーティーで看護師のユタカさん(40歳)と出会い、交際することとなった。
ユタカさんは見た目も性格も良く、なかなかのイケメンだ。男性看護師というとイメージしづらいかもしれないが、年収はビジネスパーソンの平均を大きく上回り、一流企業並に稼いでいた。当然、交際経験もあり、看護師、医師などの「美人」と付き合ってきたそうだ。
そんな彼がカズコさんを選んだ理由は、女性が多い職場での学びにあった。職場の美人は、5~6年立てば見た目が衰えてくる。そして次第に特別きれいな人でもなくなっていく。逆に5~6年という長い期間、一緒に仕事をしていて楽しいのは、圧倒的に“愛想が良い人”。そこから、「いっときの見た目で人を選ぶのはばかげている。結婚するなら、性格が良く、愛きょうのある人」という結論に達したのだ。
その点、カズコさんはお見合いパーティーの短い時間であっても、笑顔で居心地の良い空気を自然に作ってくれたという。女性の本質をよく知るユタカさんは、どんなことにもリアクションを返し、ずっと楽しそうに振る舞うカズコさんに対して「この子は性格が良いな。もっと知りたい」と思ったそうだ。
一方のカズコさんは、ユタカさんが自分のことを受け入れてくれたことが、まずうれしかったという。そこに「君ほど性格の良い子はいない」とアタックされれば、付き合わない方がおかしいだろう。
「明るくて、何でも笑ってくれて、心が安らぐ」ユタカさんは、付き合うほどにカズコさんのことを好きになっていった。
交際3カ月目、そろそろ結婚話が出てきた頃に、思いも寄らぬことが起こった。カズコさんの母親が病に倒れ、自宅介護が必要となった。父親は既に亡くなっており、一人っ子のカズコさんが世話するほかなかった。
「ユタカさんには、私から別れを伝えます。生きている間に、いい夢を見られてうれしかったです。大西さん、ありがとうございました」彼女からのメールは、そんな言葉で結ばれていた。やっとつかみかけた幸せだったのに。なぜ神様はこのような試練を、彼女に与えるのか。