データから“振る舞い”を探して、より安全に便利に

【尾原】データサイエンスとは、簡単に言うと、大量のデータの中から人びとの“振る舞い”を見つけ、それをビジネスにつなげることを目的とするものです。銀行にはたくさんのデータがありますが、今の技術でもまだ生かし切れていないところがある。それを探すのが仕事です。

銀行はこれまで、お客様と直接お会いしてビジネスを行うフェーストゥフェースが中心でした。しかし、スマホなどの画面上でやりとりをするのに抵抗がない人も増えていますから、今後は必ずしも店舗が基点にはならないかもしれません。すると、さらに、いろいろな種類のデータがたくさん集まるようになり、可能性が広がります。

【原田】とはいえ、セキュリティーの問題もあるでしょうから、他の業界のように大々的に展開するのは難しいところもあると思うのですが、どんな活用を想定していますか?

原田博植(はらだ・ひろうえ)さん。株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。人材事業、販促事業、EC事業にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。

【尾原】例えば、怪しい行動を検知して、金融犯罪につながりそうな取引を防止できないか。ATMの待ち行列をデータ分析して理解し、待ち時間を短くする工夫ができないか。他にもさまざまな分野の調査を行っていますが、まだ調査、実験段階のものが多いです。

【原田】可能性は大きいですが、どのタイミングでどんな成果が出るか、着手案件に対する影響範囲など、切り分けが難しそうですね。

【尾原】新しい分野なので、やってみるまで分からないことが多いです。しかし、ビジネスですので「何ができるんだ?」ということが問われます。

【原田】私も同じ悩みを抱えています。工夫が要りますよね。長期的な視野に立って可能性を追い求めることが必要である一方、成果が出ていなければ、チーム自体の存続が危なくなります。ですから私は、長期的な視野を持った活動をしながらも、一方で必ず、短期的に確実な成果を出すようにもしています。

【尾原】そうした工夫は、とても参考になります。