5.難しい本にチャレンジする

最近の本はどれも、わかりやすさに重点が置かれています。表現も易しく、図解が多くて文章量も少ない内容のスカスカなものが多い。ほとんどかまなくても食べられる、おかゆのような本ばかり。

イラスト=北澤平祐

こうした「おかゆ本」ばかり読んでいると、歯ごたえのある良書が読めなくなってしまいます。そんな状態では、もし自分が関心のあるテーマで、知的刺激に満ちた栄養たっぷりの本に出会ったとしても、咀嚼(そしゃく)力がないためまったく歯が立たないということになりかねません。その本の栄養を十分に吸収できないばかりか、おいしさも味わうことができずに終わってしまいます。

たとえば10冊読むとすれば、そのうちの1、2冊は、少し背伸びすれば自分でも何とか手が届く、つまり、少し時間をかけて丁寧に読めば何とか理解できそう、というレベルのものを選んでいただきたいのです。最初のうちは難しく感じ、読み終えるのにひと苦労するかもしれませんが、だんだん抵抗感がなくなっていきます。

読書力は、確実に読書量に比例します。少しずつ歯ごたえのある本を読むようにしていけば、必ず読む力がついていきます。ある程度の読書量をこなすと、今まで読んでいたものでは物足りなくなって、さらに歯ごたえのあるものが読みたくなってくるものです。

「おかゆ本」は、読む力がつかないばかりか、自分で考える力を養うために必要な刺激もあまり得られません。今の自分から少しだけ背伸びをした読書を続けていけば、5年、10年の単位で見ると、読書力が伸び、考える力も着実に身についていることに気づくはずです。栄養の多い歯ごたえのある本に触れることで、あなたの読書体験はさらに豊かなものになっていきます。