「デキる男性希望」、その言葉の裏にあるもの

大学の先輩の紹介により入社した外資系企業で、グローバルの本社やクライアント、社内他部署からの無理な要求にめげず、トオルさんはチームを組み立て、次々とプロジェクトを成功させていった。英語は決して得意ではなかったが、同僚がフォローしてくれた。このチームを作り、プロジェクトを推し進める力が認められて、彼はヘッドハンティングの後、今の地位に就いたのだった。

「僕は力の足りない人間です。周りに助けてもらったおかげで、仕事をやってくることができました。今も、同僚や部下の支えに感謝しています」外資系と言えば、弱肉強食の個人主義というイメージがあるが、その中でも周囲からのサポートを得られる、またそれに感謝できるというのは、トオルさんがデキる男という証拠だろう。

トオルさんは続けた。「でも、こんな幸運がいつまで続くのか不安です。だから僕を普通の人として扱ってくれる人と結婚したいんです」「なるほど、だから年収400万円なんですね。確かにそれだと普通って感じがしますね」「はい、僕は本当に普通ですし。年収2000万って分かると、20代前半の子でも近づいてきます。でもその子は僕にほれたんじゃない。僕の金と地位が好きなんです」彼の主張は幾分弱気に聞こえるが、稼ぎ過ぎているという自覚があり、それゆえにモテるという経験をしていれば、そうなる気持ちは分からなくもない。

そこで、高収入目当てでやって来る女性をブロックするために、お見合いでは年収を低めに申告したいと言う。逆サバ読みだけれども、事情もある。後から「実はとても稼いでいます」と言って怒る女性はいないだろう。ということで、私の責任の下、「年収400万円作戦」を実行することにした。

「仕事がデキる男性を希望!」という女性に、「仕事に対してとても一生懸命な男性を紹介します」と言ってトオルさんとのお見合いを打診していったが、「年収400万円って普通じゃないですか」と、断られていった。「年収400万円しか稼げない人が、仕事をできるとは思えません」ということだろう。

その現状に「もう、本当の年収を言っちゃったらどうですか?」と何度も説得を試みたが、トオルさんは首を縦に振らなかった。彼の粘り勝ちか、ついに仕事がデキる男性を希望した中で、たった1人だけお見合いを受けてくれる女性が現れた。