仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第14回は「貯蓄下手」に関するご相談です。

【今回のご相談】
お金を貯めるのが苦手です。20代の頃から貯めよう貯めようと思いながら、ズルズルと30代半ばまで来てしまいました。お金を借りたりすることはありませんが、お給料をもらったらもらっただけ使ってしまいます。使い道は洋服、友人との飲食、ジムや習い事の月謝などです。転職する前は、年収が今より3割ほど少なかったので、その少ない方の収入額でも十分にやっていけるはずなのですが……。どうしたらいいでしょうか?
「昔は、今よりもっと少ない収入でやりくりできていたのに……」収入が増えたのに貯蓄ができない人はいませんか。今こそ考え時です。(イラスト=伊野孝行)

1年間は通帳を見ず、大人としてまず貯める

【河崎環さんの回答】

天引き貯金に限ります。年収が30%アップしたならば、少なくとも増えた手取り額の半分を、給与が口座に振り込まれたらすぐに定期に入れる設定をするなり、自分で他の貯蓄用口座に移すなりしましょう。あなたは転職前の年収で十分にやっていけますし、30代半ばの大人として「年収アップに応じて拡大した欲望」を増えた手取り額のもう半分の内で収めてみせる、自己制御の経験が必要です。ボーナスからも一定額を必ずそこに入れ、通帳もカードも普段自分の視界に入らないところへ保管します。自分のフラフラした欲望の干渉をまったく受けることのない「岩のように堅い貯蓄口座」を作り、それを自分の意識の範囲外でひと月ごとに肥え太らせていくのです!

するとある時、「えっ、こんなに貯まってるんだ」という嬉しい驚きとともに、自分も貯蓄できるのだという実績をともなう自信を手にすることができます。その自信は、いずれ「貯蓄は面白い」という感覚を呼び、せっかく貯めたのだからどこまでいくか見てみようといったゲーム的な楽しみ方へと移行していくかもしれません。とにかく自分の手の届かないところで貯め、まず1年間は、そこにいくらあるかを意識してはいけません。その額を意識したら、あなたは「使う」ことを考えてしまうからです。

消費は刹那的な快楽を提供してくれる浮気者のイケメン、でも貯蓄は裏切らない、落ち着いて誠実な「生涯の伴侶」。今年1年頑張り、来年は通帳をうっとり眺める女になってください。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。