疑問3:若いフィリピン人講師は、ビジネス英語を教えられるのか?
フィリピン人講師は総じて若い。私がついた講師の年齢は、21歳から33歳まで。平均すると24歳くらいだろう。彼らは大学を卒業してすぐ英語講師になっているので、ビジネス経験が浅いのは事実だ。
そのため、例えば私の仕事ではよく必要になる「広告換算費」などの単語が分からなかったり、バーター条件を勝ち取るための交渉で使う英語、といった状況を限定した英語などを教えてもらう時は、日本とフィリピンの文化の違いもあり、背景の説明が多少必要だった。
しかしインターネットを使いこなし、英語で情報収集する彼らは、不明点があれば終業後にきちんとリサーチして、翌日にはしっかりした回答を整えてくれる。既存のテキストにぴったり合う答えがないからと、自宅でテキストを打ち、音声を録音して来てくれた講師もいた。これについては生徒自身のビジネススキルと英語スキルによるところが大きいが、私としては、フィリピン人講師が用意してくれたレベルのビジネス英語を使いこなすことができるようになれば、まずは十分だと考えた。
一方で、若さが強みになることもある。彼らはアメリカのWebサイトをとにかくよく見ているので、例えば「世界のトレンド」「世界のニュース」「最新のITツール」といった情報に精通している。「世界で盛り上がった日本についてのトピックス」など、日本語で検索しても見つからない話題を、いくつも教えてもらった。
疑問4:フィリピンの治安は安全か?
フィリピンで暮らすとなると、治安が気になる人もいるだろう。首都マニラはさておき、今回滞在したバコロド市やセブ島は、フィリピンの中では比較的治安がいい地域と言われている。海外旅行に慣れている人なら、例えばカンボジアやベトナムといった他の東南アジアの国と同じくらいの治安、つまりスリやひったくりに気をつけて、危険だと言われる地域には近づかず、なるべくひとりでは歩かず、夜は外出を控えると考えればいいと思う。
しかし学校には、海外旅行経験がほとんどない、さまざまな年齢の人が留学してくるので、各学校はそれぞれ安全対策をとっていた。例えば、第3回で紹介した「セント・ラサール大学付属語学学校」では、交通量が激しい道路の横断をサポートする交通整理のスタッフがいたり、講師と出掛ける場合は、講師が寮の敷地内まで送迎してくれた。
「QQ イングリッシュ」ITパーク校では、徒歩10分もかからない寮と学校のあいだにシャトルバスを定期運行していた。同シーフロント校のように、ゲートはガードマンに守られていて、敷地外に出る必要のない学校と寮の一体型を選ぶ手もある。
私自身は治安に不安を覚えることはなかったが、8週間の滞在中、バイクに乗ったふたり組によるショルダーバッグのひったくり事件を目撃した(被害者は日本人女性)。警察の対応がいい加減なのも、他の東南アジアの国と同様だ。恐がりすぎる必要はないが、海外保険にはしっかり入っておきたい。
※最終回となる次回は、帰国して英語力をキープするための勉強法をお伝えします。記事配信は2月18日の予定です。
年間150日ほど海外に滞在し、その土地に根ざしたフードカルチャーをメインに、独自の視点からやわからな語り口で綴られる紀行文を雑誌やウェブサイトに寄稿。これまで訪ずれた国は50カ国ほど。女性を中心とした地元の人たちとの交流から生まれる“ものがたり”のあるレポートに定評がある。旅と食にまつわる本のコレクターでもある。現在、朝日新聞デジタル&Wで「世界美食紀行」、産経ニュースほかで「江藤詩文の世界鉄道旅」を連載中。著書に電子書籍『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ全3巻(小学館)。
【世界美食紀行】http://www.asahi.com/and_w/sekaibisyoku_list.html
【江藤詩文の世界鉄道旅】http://www.sankei.com/premium/topics/premium-27164-t1.html
撮影=江藤詩文