一日一日が本当に長かった
そのような一日というのは、本当に長いんです。拘置所の部屋に張ってあるカレンダーを穴が開くんじゃないかというくらいに見つめ、やっと1日が終わった、やっと2日が終わった、と気づけば数えている。取り調べが終わっても拘留は続くので、終わりが見えない状況が苦しくてたまらなくなってくるんですね。
そんな中で『一日一生』を読んだとき、私はたくさんの言葉をもらったように感じました。ありのままの自分であり続け、一日一日を生きることの大切さ。そのことが本当にシンプルに、優しく説かれていたからです。
〈一日が一生、と思って生きる〉
〈身の丈に合ったことを毎日くるくる繰り返す〉
日記にそう書き写しました。
酒井先生は、比叡山延暦寺の千日回峰行という修行を2度にわたって満行した僧侶です。修行は険しい山道を歩き続ける過酷なものですが、千日間続くその修行もまた、一日一日の積み重ねだと言う。いまはこの一日のことだけを考え、眠るとまた新しい自分の一日が始まる。そのように、日々を積み重ねていくのだ、と。
私は当時、取り調べの20日間に耐えられるかどうか、ということばかり考えていました。
でも、そうじゃないんだ。自分の身の丈に合ったことだけを、今日だけやればいい。そう考え方を変えると気が楽になって、長い取り調べも最後まで耐えられるという気持ちになりました。一日一生。それで自分は大丈夫だと思うことができたんですね。