偉い人の心が緩みやすい“場”をとらえよ
上司が外出するときや、クライアントが帰るときは、エレベーターホールまで見送ることが効果的――これは、会社を設立したばかりのときに部下から教えてもらった小さな習慣です。
彼女は、私が出かけるときに、いつも玄関先まで見送ってくれて「いってらっしゃい」「お気をつけて」と言ってくれました。すると、私のほうも「そういえば、○○さんから電話がくるかもしれないから、今週中に打ち合わせの時間をとれそうか聞いておいてもらえる?」といった小さな頼みごとから、「時間があったら、今度のプロジェクトの企画、少し考えておいてもらえるかな?」のような今後の仕事に関わる頼みごとまで、ついいろいろとお願いしたくなります。
これは、彼女がいつも見送ってくれたからこそ気づけたことですが、人は意外と外出する間際や、帰る間際になっていろいろなことを思い出すものです。誰もそばにいなければせっかく思い出しても頼めませんが、そばにいてくれたら、その人にお願いしたくなるでしょう。
そこで、お願いしたことに対して忠実に成果を挙げてくれたら、次もその人に仕事を頼みたくなる。これが、人の心理というものです。
また、会社の中というのはあくまでもオフィシャルな場ですが、そこを一歩離れたエレベーターや玄関までの空間というのは、オフィシャルでもあり、プライベートでもある、中庸な空間と言えます。
雰囲気が変わると、心もやわらぐので、「そういえば、この前○○に会ったら、君によろしくと言っていたよ。今度食事でもしようか」といったような会話が取引先の人とも弾みます。
実は、このちょっとした話に、大きな可能性が潜んでいます。
これは男性から聞いた話ですが、男性も苦手な上司や縁遠い憧れの上司にたまたまトイレで一緒になったとき、隣り合うブースで用をたしながらの何気ない会話や頼みごとがきっかけで仕事運が開けることもあるそうです。
こうした隙間の時間や空間を上手に活用すると、もっと新しいチャンスが広がるのかもしれません。
ちなみに、いつも玄関先まで見送ってくれた彼女の実家は理髪店。お客様の姿が見えなくなるまでお見送りする父親と母親の姿が目に焼きついていたのでしょう。彼女にとって「お見送りをする」ことは、体に染みついていた習慣だったのです。
お見送りをしたことがない人にとっては、違和感があるかもしれません。しかし、慣れればそれが習慣に変わります。
さっそく明日から「お見送り作戦」を遂行して、仕事のチャンスを効率よくつかめる女性になりましょう。
※本連載は書籍『30歳から自分を変える小さな習慣』(島村美由紀著、プレジデント社刊)からの抜粋です。
商業コンサルタント。1956年、神奈川県川崎生まれ。雑誌・書籍の編集業務、シンクタンク研究員を経て、商業コンサルタントとして独立。株式会社ラスアソシエイツ設立、代表取締役就任。都市計画、商業施設計画、店舗業態開発などのコンセプトワークやトータルプロデュースを手掛け、大規模開発を成功させる。ラゾーナ川崎プラザ、羽田空港第1旅客ターミナルビル「スタースイーツ」など、実績は多岐にわたる。著書に『30歳から自分を変える小さな習慣 運を引き寄せる女性の6つの法則』(プレジデント社)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1713)がある。