「やる気になる」と「やった気になる」との大きな違い

さらに、“頑張るための情報”は、ときに面倒な状況を作り出します。

仕事でも趣味でもかまいません。あなたが何かに一生懸命取り組みたいと思って、そのためのノウハウを得るために情報収集したとしましょう。情報を集めた結果、頑張るための方法論をたくさん見つけ、それをしっかりと読んだ結果、「やった気になってしまった」というケース、これは悲劇です。皆さんも心当たりがあるかもしれません。大切なのはやる気になり、実際に取りかかることなのですが、多くの場合はやった気になっただけでもう満足、お腹いっぱいになってしまうのです。読みやすい、かみ砕かれた情報を手にすればするほど、この現象は起きてしまいがち。

例えば、ある問題を解決したいとします。本来は問題の原因を特定するために、さまざまな知識を取得して、解決に導くための方法を自ら模索し、実行するのが望ましい。しかし、世の中にある多くの問題は(特に、仕事において直面する問題のほとんどは)誰かが同じようにぶつかっていて、いろいろなアプローチによって解決されているものが多い。つまり、もうゴールが描かれた情報を簡単に手にすることができるわけですから、ある種の疑似体験がそこで起きてしまって、達成感を得られた状態になってしまう。インプットしただけなのにアウトプットまで完了した、と思えてしまうのかもしれません。

自分自身の「ワークスタイル」を少しだけ考えてみる時期

このコラムを読んでいるPRESIDENT WOMAN Onlineの読者は、もうすでにビジネス社会でさまざまな経験をして、キャリアの曲がり角に差し掛かろうとしている人も多いはず。そういう人たちにもお勧めしたいのは「書かれていたことを改めてやってみる」というスタンス。

文章に「ぜひやってみて」と書かれていても、ほとんどの人は自分ではやらないし、試しもしません。でも、実際には未経験なのにもかかわらず、気分的には経験済みになっていることが澱(おり)のように溜まっている可能性が少なくない。改めて、手で書いてみる、口に出してみる、身体を動かしてみる、というフィジカルな部分を大事にしてみることです。

もう1つお勧めするのは、「自分にとって必要な情報を吟味するために、改めて自分自身のワークスタイルを整理してみる」ことです。あらゆることに全力投球したい、という気持ちがある人は別ですが、仕事において本音と建前が違っている人は、そろそろ建前部分には力を抜いてもいいはずです。(いい意味で)手抜きをしたとしても、周囲には悟られず、頑張っていると見せかけるだけのテクニックは、すでに持っているでしょうから。これからは自分が取り組みたい、興味がある、伸ばしたいと考えているところにだけ食指を伸ばして、なるべく未知だと想像される部分の情報を収集し、アウトプットすることを心がけてください。もちろん、この提案が既知ならば、華麗にスルーすることをお勧めしておきます。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。