労使協定が結ばれていれば5原則に例外もある

【なの】ホントですよ! 私も毎月の支払いがきついので痛いほど気持ちが分かります。先生、この5原則の中の「直接労働者に払う」というのは、労働者本人に「手渡し」ということですか?

【岩沙】そうです。法律では、本人に直接手渡しが原則なんです。ただ、労働者の合意があれば、金融機関等への振り込みでも可能ということになっているんですよ。

【なの】そういえば、入社時に希望振り込み先として口座番号などを書いた気がします。

【岩沙】そうですよね。入社時に給与振り込みについて説明を受けていると思います。

【なの】手渡しが基本というのはちょっと意外でした。口座振り込みの会社が多いのに、実は振り込みの方が例外なんですね。給与を受け取るのはどんな時でも本人じゃないといけないんですか?

【岩沙】代理人や親権者への支払いは認められていませんが、労働者本人が受け取り困難な場合に本人が誰かを使者として受け取りに行かせることは認められます。手渡しでなくとも、結局奥さんが旦那さんの給与を持っていっちゃう家庭もありますしね(笑)。

【なの】働く身としては、笑えませんね……。はっ! 先生! 気付いたんですが、「全額払いの原則」があるのに、いつも社会保険料とか税金とか差し引かれて、手取りが嘘みたいに少なくなるんです! あれは「全額払いの原則」に違反していません?

【岩沙】その気持ち、とてもよく分かります……。目を疑いたくなりますよね。でも、給与から社会保険料や税金を差し引いて良いというのは、別の法令(所得税法など)で定められているので、大丈夫なんですよ。

【なの】まぁ、税金などは会社が代わりに払ってくれているだけですもんね。でも、友人の会社は、社員旅行の積立金も毎月少しずつ差し引かれるって言っていました。これはどうなんでしょう?

【岩沙】それは、おそらく「労使協定(ろうしきょうてい)」といって労働者と使用者の間で書面による協定が締ばれているんだと思います。労使協定が結ばれていれば例外としてOKなんです。社宅や寮などの住居費や、社内預金、組合費なども差し引かれるという話もよく聞きませんか?

【なの】確かに、聞きます! 結局、労働基準法で5原則が定められていますけど、場合によっては例外が認められているパターンも多いんですね。

【岩沙】そうですね。ただ、この原則はいざという時に労働者を守ってくれる盾にもなり得ますからとても重要ですよ!