ヒラリーは、数のうえでは多数派であるにもかかわらず、長きにわたり政治的弱者に甘んじてきた女性の代表、さらにはすべての政治的弱者の代表になろうとしている。このように彼女が「弱者代表」へと路線変更した背景には、見えないところで起きている米国の人口動態の変化が深く関わっている。

08年の大統領選挙は、今振り返ると、黒人対女性というマイノリティー対決でもあった。そのため、民主党の予備選挙でオバマが勝利すると、白人男性の候補者を擁立した共和党と対決する本選挙は盛り上がりに欠けた。移民は当時よりさらに増加し、黒人、ヒスパニック、アジア系などを合わせると全人口の約4割に達し、米国内の多様化が進んでいる。

米国人口の人種別構成

また同選挙から、多様化が進んだ社会で育った1980年から2000年に生まれたミレニアル世代が投票結果に影響を与えるようになっており、次期大統領選挙ではさらにその世代が増える。つまり、今までは白人男女の票をそれなりに集めれば勝利できたが、今やマイノリティーの票なくして当選することは不可能な時代になっているのである。

ちなみに、08年の大統領選挙では、ヒラリーを圧倒的に支持していたのはウーマンリブ世代の女性にとどまっていた。しかし、最近の調査を見ると、ヒラリーは若い世代の女性たちからの支持も勝ち得ている。これから1年半続く大統領選挙、変わりゆく米国の姿に注目だ。

横江公美

松下政経塾15期生。ヘリテージ財団で上級研究員を務める。VOTEジャパン(株)社長を経て、現在「PACIFIC21」代表。