[C]の人の性格傾向と心理分析
日本人には一番多いタイプです。その意味ではご安心を。誰だって自分のストレスマネジメントから言えば、相手構わず主張できたら一番気楽です。でも、今後のことや周りへの影響を考えると、いつでも上司に言いたいことが言えるわけではありません。たまには言葉をぐっと心の中でかみしめて、発言しないこともある。エゴグラム心理テストをやると「大人、アダルト」に分類されるタイプ。あなたは、会社の中で頑張っているし、周りからもかわいがられていますね。

エゴグラム心理テスト:アメリカの精神科医バーンの提唱した交流分析理論に基づき、東京大学医学部心療内科TEG研究会により開発・作成された性格検査。人が持っている“5つの心”の強弱から性格特徴をみることができる。

対策
自分の絶対に譲れない価値観をいつも、しっかり据えておいてください。例えば「来月の新企画コンペでは主張の内容全部が認められなくても構わない、でも最低限、発言権だけはもらおう」という具合に。そうすると、何もかも我慢しているわけではないという自己正当化の理由ができて、まれに主張できなかった自分に対して「まあ、言いたいことが言えない時もあるのが会社勤めというものね」と割り切ることができます。たまに上司に遠慮するくらいのあなたは、どことなく奥ゆかしく見えて素敵ですよ。(でも内心で、絶対に譲れないことは決めておくのですよ)。

[D]の人の性格傾向と心理分析
なんでも言える自己主張の強いあなた。相手が上司だろうがお客様だろうが言うべきことは言います、というタイプ。一見強くて頼もしい存在ですが、集団の中ではあまりに主張が強すぎて知らない間に嫌われたり、不利な仕事に推薦されたりする人です。

対策
「江戸の敵(カタキ)を長崎で討つ」ということわざあります。上司は別のセクションの上司と横につながっていたりします。主張しすぎて思わぬ敵に足をすくわれないように、上司と意見が違う場合は「全体否定文」で言わないで「部分否定文」に変えてください。「おっしゃられたことはよく分かりました。すみませんでした。それでこの1つだけ聞いていただいていいですか」と言ってください。文章の前がイエスで後ろ半分が違う意見だから、それで、でなくてしかしだろうと思いますか? 文法的にはその通り。でも人間の心情において、特に上司は、あなたよりは優位な立場で支配欲求も強いことが多いのです。逆説の接続詞は反抗的に響きます。順接接続詞の「そして」でやんわり主張しましょう。


 まとめ 

【勇気】のレッスンはいかがでしたか?

鎌倉時代、吉田兼好によって書かれた「徒然草」には「物言わぬは、腹ふくるるわざ」という文章がでてきます。現代のパフォーマンス心理学でこれは「アンガーコントロール」の土台となる重要な考え方です。言いたいことがいっぱいあるのに我慢ばかりしていると、満たされなかった欲求がどんどん膨らんで欲求不満となり、いつかプツンと切れたり怒りが爆発するという理論です。

有能なあなたが、常に上司へのお願いごとや注文を控えていたら、会社にとって損失になる場合もあります。常に黙っていると「迎合型性格」と見なされて、周りから都合よく利用されることもあります。

上司も人間だ、話せば分かると、思い切って主張をしましょう。但し、相手の超忙しい時に些末な相談を持ち込んだり、一度説明したことをまた言いに行ったりすると嫌われますから、言い方はこの連載でしっかり学んでくださいね。

あなたもOK、私もOK。ともに貢献し合う言い方ができることが、会社という組織であなたが「共同体感覚」を味わって生き抜くコツだ、とアドラ-も言っていますよ。


佐藤綾子 パフォーマンス心理学 博士
常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。近著に『非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義』がある。