歩み寄る糸口は探せるか。
育児の困難を解決し、少子化に対する策を具体化するのは、国政より地方行政だと私は思う。いま足りないと話題沸騰の保育所をつくるのも、国家ではなく自治体だ。つまり、少子化を解決するのは市町村なのだ。
いま、いろんな自治体が子育て支援に策をめぐらせはじめている。大都市圏でも、過疎化が進む農村でも、子どもを育てやすい環境を整えて若い世代を呼び寄せ、その自治体の将来を再構築していこうとしている。子育て支援を実現した自治体では、どんな考えでどんな施策が実行されたのか。移り住んだ人はどう生活しているか。見に行って記事にしてみたい。
一方で、子育てをめぐるもっとあからさまな“問題”もあちこちで噴出している。東京都目黒区で2015年4月のオープンに向けて準備していた新しい保育所が、住民の反対運動により開園を延期したという。このニュースを聞いて、反対運動を起こした住民たちをののしるのは簡単だ。保育所を切望する若い家族の気持ちがわからないのか。子どもを疎んじる年配者は公共心がない。そんなことを言いたくもなる。
だがそこにこそ、私たちが解決するべき問題がズシンと存在するのだと思う。定年を迎えてようやく落ち着いた余生を送ろうとする人びとが静かな生活を奪われるのは困ると言うとき、私たちは「日本の少子化を解決するためにエゴを出すな、ガマンしろ」と責めるべきなのだろうか。
そうではなく、なぜその人びとは保育所が来ると聞くと「うるさくなる」と感じてしまうのか、そう感じてしまう人びとと保育所はどうやったら折り合いがつけられるのか、そこをこそ考えるべきなのだと思う。
私たちは、お互いにお互いをルールで縛りあい、踏み外さないよう監視しあうようになってしまった。ルールを少しでも破ると「ほら! ルールを破った!」と指摘する。日本のいびつな公共心の結果がそこにはあるのだ。ルールとはそもそも、みんなが助け合って生きるためにできたはずなのに。
共に助け合う。そんな簡単なことこそが答えの糸口だと私は思う。その糸口をそれぞれの町で探し当て、複雑に絡み合う人びとの気持ちを解きほぐせるか。いや糸口を見つけるだけでもできれば御の字だが、そんな記事にこれから取り組んでみようと思う。皆さんからも情報や意見を届けてくれるとうれしい。
コピーライター/メディアコンサルタント
1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボッ ト、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランス。ブログ「クリエイティブビジネス論」でメディア論を展開し、メディアコンサル タントとしても活躍中。最近は育児と社会についても書いている。著書にハフィントンポストへの転載が発端となり綴った『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4990811607/presidentonline-22/)』(三輪舎刊)がある。