十分な間を置くスピーチの説得力
これは、以前に悠仁親王の「おことば」との比較で述べたことだが、この論文でも、父である天皇の教えを、愛子内親王が忠実に実践していることが指摘されている。
その教えとは、つねに聴衆の目を見てしゃべるということであり、自分の思いをはっきり伝えようとすることである。
それとも関連するが、論文では、愛子内親王の「間」の取り方にも注目している。十分な間を置くことで、「えーと」とか「あのー」といったつなぎの言葉、これは言語学で「フィラー」と呼ばれるが、それを排除することができる。
実際、愛子内親王の会見では、十分に間を置く話し方が見られる。宮内庁公表の会見文に、論文で示された間の長さを補うと、次のようになる。「これまでのあらゆる経験は(2秒の間)、多くの方の(3秒の間)、支えや御協力があってこそ成し得たものであると身をもって感じております」。
この論文で面白いと思ったのは、愛子内親王が、皇室の公的な側面に関連して父親に言及するときには「天皇陛下」という表現を使い、家庭内での私的な事柄について述べる際には「父」を使っていることである。
このような使い分けは、認知心理言語学では「リフレーミング(再枠づけ)」として捉えられる。つまり愛子内親王は、公的な世界と私的な世界を明確に分けていて、「天皇陛下」と「父」という異なる表現を使うことで、二つの世界をスムーズに行き来しているわけである。
愛子さまの「おことば」に共通する志向
この記者会見の時点で、愛子内親王はまだ20歳だった。20歳では、普通、そうした巧みな言葉の使い方はできないし、苦労することが多い。いかに天皇・皇后の薫陶よろしきを得ているかがわかるが、それに応えられるだけの力を持っていることも間違いのない事実である。
医学検査学会での挨拶に話を戻すならば、これは愛子内親王の「おことば」全体に共通した特徴になるが、つねに「未来」が志向されていることである。
愛子内親王は、学会のテーマについて、「経験豊富な臨床検査技師と未来を担う若手臨床検査技師、そして世界の臨床検査技師同士の連携が強化され、人と人との架け橋が育まれるとともに、本学会が情報を共有する場となり、世界の臨床検査にとって、未来へと繋がる大きな架け橋になることを願って決定されたと伺いました」と述べていた。
この学会のテーマは、日本語に訳すと「世界中のBLS(医学検査)の未来への架け橋」である。愛子内親王は、その架け橋にいくつもの意味があることを、挨拶のなかで強調したことになる。

