「愛子天皇」待望論にどう臨むのか

しかし、それなら首相として明確なビジョンを提示すべきである。たとえば、高市氏が模範としている安倍晋三元首相は、在任中『美しい国へ』という新書を刊行し、自らのビジョンを明確にしている。麻生氏にしても、外務大臣の時代に『自由と繁栄の弧』という書籍を刊行し、外交における新たな日本の方針を形にして示した。

高市氏は、そうしたことを首相に就任してから試みていない。したがって、どういった政治をめざしているのかが、国民にはなかなか見えてこないのだ。

皇室典範の改正はなされたものの、それに実効性がないばかりか、「皇位の安定的な継承」については依然として手つかずのままである。後者のほうが、はるかに問題としては難しい。ちなみに改正法の成立直前、7月15日の党首討論では、「皇位継承の問題については残念ながら今回は先送りになっております」と、首相自身が述べている。

無理もない。その問題に取り組むには、国民の間に根強い「愛子天皇」待望論に対して、どのような姿勢で臨むのかが問われるからだ。

女性も首相になれたのに、なぜ、女性天皇はだめなのか。

過去に実際、女性天皇が存在しているだけに、そうした主張を論破するためには、明確な根拠が必要である。高市首相は、それを示せていない。

天皇皇后両陛下と愛子内親王殿下(2022年12月23日)
天皇皇后両陛下と愛子内親王殿下(2022年12月23日)(写真=外務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

未来を見通せない首相の狭い視野

要するに、皇室典範の改正作業にあたった高市政権下の政治家や保守派の論客は、男系男子での継承をゆるがせにしてはならないと言うだけで、なぜ女性ではだめなのか、その理由を明確に述べることができていない。

より重要なのは、未来のことである。これだけ男女平等が進んだ現代の社会で、明らかに女性差別の産物でしかない「男系男子のみによる皇位継承」という考えは、はっきりと時代遅れになっている。このことに対して、日本初の女性首相として、高市氏には明確なビジョンを示す役割がある。

高市氏は、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という流行語を生み、実際、周囲が心配するほど、個人としては頑張っているようには見える。

しかし、自分であらゆることを処理しようとして、「ブレーン」を作り出す作業を怠っているように思えてならない。自分に助言を与え、一緒にビジョンを描き出してくれる優秀な「ブレーン」作りである。

現代の政治の世界に起こる問題は、首相一人が考えても到底処理できない複雑さを持っている。それぞれの重要分野に精通したブレーンを集めることは不可欠なはずである。