だから「演奏するだけ」でいびきが改善される
では、なぜディジュリドゥの演奏が効果的だったのだろうか。
上気道の開閉に関わる筋肉が鍛えられたのもあるが、「循環呼吸」という呼吸法を練習したことが効果的だったのではないかと、研究者たちは考えている。
循環呼吸とは、楽器を演奏する時に、口から息を吐くと同時に鼻から息を吸う演奏法のことだ。息継ぎの際に音を途切れさせない方法である。
クラシック音楽ではあまり使われない演奏法だが、ディジュリドゥなどの民族楽器を演奏する際によく使われる。厳密には、息を吸う前に口の中にできるだけ空気を溜め、その空気を使って息を吐いている間に、一気に鼻から息を吸う。
これがまた、結構コツがいる。水を入れたグラスに、ストローで息をぶくぶく吹き込むのが典型的な練習方法で、これを試みて大失敗を繰り返し、幾度となくむせ、無惨にも鼻へ水が逆流したことがあるのはきっと私だけではない(と願う)。
研究者たちは、循環呼吸をすることで声道全体の筋肉が鍛えられ、症状が改善したと推測している。
精霊と交信するための祭儀で演奏された
後から行われた別チームの研究では、オーボエやバソンなどの、ダブルリード(管楽器に使われる発音装置の「リード」が2枚合わさったもの)の楽器でも効果的という結果が出ている。ダブルリード奏者は、他の楽器奏者よりも睡眠時無呼吸症候群のリスクが低かったのだ。
しかし、専門家たちはこれらの結果を実証するにはもっと大規模な研究が必要で、通常の治療をやめることは勧めないとしている。実際にディジュリドゥの効果も、機械をつけて寝る通常の治療よりも若干小さかった。
一方で、スアレスさんのように通常の治療を嫌がる人も多い。このような人が治療を続けるには、ディジュリドゥのようにモチベーションを保ちながら行えるものが必要だとプハン教授らは述べた。
1000年以上前から存在するとされ、世界最古の管楽器とも呼ばれているディジュリドゥ。もともとは、精霊と交信するための祭儀で男性によって演奏されていたそう。オーストラリア先住民族の奥様一同は、旦那様のいびきに悩むことはなかったのだろうか。
後日談
スアレスさんは自らの経験を生かし、いびきや睡眠時無呼吸症候群の改善のためにカスタマイズしたディジュリドゥを開発した。その名も「スナドゥ(Snadoo)」。
小さめに作ってあり、響きを抑えてあるため、本物のディジュリドゥほど近所迷惑の心配をしなくてもいいのだとか。
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