おじさんができることはトラブルを収めること

この本では、ここまで「おじさんってダメだなあ」という話をずっと続けてきました。

林伸次『おじさんになっても』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
林伸次『おじさんになっても』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

でも、おじさんにしかできないことって、実はたくさんあるんですね。仲裁もそのひとつです。場数を踏んでいること、プライドや意地がどこに引っかかっているかをその場で読む力、そしてお互いが「この人が言うなら仕方ない」と感じさせる存在感。それらが揃ってはじめて仲裁ができるわけです。それはやっぱり、年の功としか言いようのないものです。

80歳くらいの人が「まあまあ、待ちなさい。落ち着いて」と言うと、みんな落ち着きますよね。それと同じことなんだと思います。

あなたはこれまで、仲裁に入ったことがありますか? 僕もあの経験以来、仲裁に入ることを心掛けるようにしています。

別に、仲裁でなくてもいいんです。たとえば、若い人が大きなミスをしたとします。ネットで叩かれたり、何か事故を起こしたり、犯罪に近いことをやってしまったり……そういうことは誰にでもあります。

僕たちおじさんだって、今まで何度も大きなミスをしてきたじゃないですか。だからこそ、凹んでいる若者にそっと近づいて、自分がミスしたときの話をしてもいいし、一緒に火消しを手伝ってもいいし、同じミスが起きないように考えてあげてもいいですよね。

僕たちおじさんがこの世の中でできること、それはトラブルを収めることです。仲裁に入ること、トラブルを未然に防ぐこと、経験を語ること、一緒に火消しに回ること。できることはたくさんあります。そんなおじさんになりたいものです。

林 伸次(はやし・しんじ)
「bar bossa」店主

1969年生まれ。徳島県出身。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開設。選曲CDやCDライナーの執筆を手がけるほか、noteやメールマガジンでは飲食店経営や人生について綴ったエッセイが多くの読者の支持を集めている。2025年には本書にも所収したnote記事「日本で一番わかりやすくてためになる小さな飲食店の始め方 300万円でお店をやろう」が話題となり、note主催の創作大賞2025で入賞を果たした。著書に『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(以上、幻冬舎)、『結局、人の悩みは人間関係』『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』『マスター、お酒の飲み方教えてください』(以上、産業編集センター)、『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(DU BOOKS)等がある。