通過儀礼が求められる悠仁さま

そうした伝統を受け継いでもらえるよう、天皇家では愛子内親王に懇切丁寧な教育を施し、愛子内親王もそれに応えるための精進を怠っていない。いくら社会人とはいえ、23歳や24歳で、国際会議で堂々とした挨拶をするのは容易なことではない。

悠仁親王がその域に達するためには、たんに年齢を重ねるだけではなく、「一皮むける」経験が必要である。試練を乗り越える「通過儀礼(イニシエーション)」が求められるのだ。

大学を卒業することも通過儀礼の一つだが、それで本人が大きく変わることはあまりない。悠仁親王の場合、大学を卒業後、海外留学することを両親も勧めており、本人もそれを希望している。留学先はイギリスになると考えられるが、そこで、本当の意味での一人暮らしを行い、自律した生活を送る経験が必要となってくるであろう。

その上で、大学院の修士課程を修了し、さらには自然科学を専攻している以上、博士号を取得することも視野に入っているはずだ。海外の大学院で博士号を取得することは、十分に通過儀礼の役割を果たすことになる。

ますます広がる愛子さまと悠仁さまの差

ただ、それまでにはかなりの時間がかかる。大学はあと2年半あり、大学院の修士課程を修了するには最低で2年かかる。博士号を取得するとなれば、そこからさらに3年から4年はかかる。それは、今から7年、あるいは8年先のことである。

海外に留学すれば、日本に戻ってくる機会は少なく、公務に携わることも難しい。その期間、悠仁親王が留学先でどのような生活を送っているかは、何らかの形で伝えられるであろう。だが、国民の前に直接姿を現す機会はほとんどないはずだ。

その間、愛子内親王のほうは、精力的に公務をこなし、その重要性は日増しに高まっていく。天皇はすでに高齢者の仲間入りをしているし、雅子皇后もあと2年余りで65歳を迎える。

愛子内親王が天皇家の中心として活躍を続けていけば、悠仁親王との差はますます大きくなる。

果たして、7年後か8年後、悠仁親王は次世代の天皇となりうる成長ぶりを示すことができるように成長しているのだろうか。

愛子内親王の存在が、悠仁親王にとって越えがたい壁になることも十分に考えられる。愛子内親王以上の信頼を国民から得ることが、悠仁親王の通過儀礼で課される最大の「試練」なのである。

天皇皇后陛下並びに愛子内親王殿下(2022年12月23日)
天皇皇后陛下並びに愛子内親王殿下(2022年)(写真=外務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons
島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家

放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。