※本稿は、山岡淳一郎『マンション 狙われる修繕積立金』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。
タワマンは「一点もの」
政府の「都市再生」策の一環として建設されたタワーマンションが、一斉に大規模修繕の時期にさしかかっている。超高層マンションは建物のボリュームがけた外れに大きいだけでなく、複雑なインフラ設備を膨大に内包しており、一般の中低層マンションとは異なる独自の修繕計画が求められる。
超高層の特殊性について、改修技術者団体の幹部は、こう語る。
「タワーマンションは、工法、材料、システムどれも斬新で実験的な要素が入っている。一棟ずつ全部違う一点もの。とくに設備は特殊です。エレベーターや空調、給湯、照明、セキュリティ、配管など最先端の便利なものが好まれる。新築から5年、10年と経つうちに設備も劣化、陳腐化します。この更新が大ごとなのです。費用面では、外側を直す大規模修繕をはるかに凌ぐ。莫大なお金がかかります」
つまり、外壁の補修やベランダの防水などの大規模修繕と、複雑な設備の更新をトータルに計画的に実施しなくてはならないのだ。
しかし、タワーマンションも景気浮揚の開発主義で建てられ、開発者側の修繕への目配りは乏しく、管理組合にかかる負担は大きい。
「都市再生」で青天井の容積率
国内初のタワーマンション(高さ60メートル、20階建て以上)は、1976年に住友不動産が埼玉県与野市(現・さいたま市)に建てた「与野ハウス」(21階・463戸)だといわれる。初期のタワーマンションは都市計画上の規制も多く、なかなか数が増えなかった。
だが、1990年代にバブル経済が崩壊し、金融機関が不動産・建設業界の不良債権(塩漬けにされた土地)を抱え込んで、流れが変わる。政府は、不良債権を処理する手段として、タワーマンションの開発に白羽の矢を立てた。
1997年、橋本龍太郎政権は、建築基準法と都市計画法を改正し、「高層住居誘導地区」を導入。容積率(敷地面積に対して建てられる延床面積の割合)を大幅に引き上げ、高さの制限も緩め、超高層の建設ラッシュの露払いをした。