見積りより1億円も安い工事費

東京・港区のT建築事務所が首都圏の超高層マンションの管理組合の修繕委員長に内容証明を送りつけたケースでは、T建築事務所は、大規模修繕の施会社選びを自分たちがコントロールできなければ設計コンサルタントを「辞退する」と修繕委員長を脅している。

山岡淳一郎『マンション 狙われる修繕積立金』(平凡社新書)
山岡淳一郎『マンション 狙われる修繕積立金』(平凡社新書)

T建築事務所は、「談合・リベート」のスキームを使って、工事費を増額しようともくろんでいた可能性が高い。修繕委員長が私に吐露した心情をもう一度記しておこう。

「内容証明を送りつけられたときは、落ち込んで、滅入ったけど、マンションは、わたしたちの財産。住民が修繕工事の業者を選ぶのに文句を言われる筋合いはない。住民を説得する根拠もモラルもないT建築事務所とは契約を解除して、縁を切りました。改修業界の人に聞いてみるとT建築事務所は札つきのようですね。あちこちでウチと同じように管理組合が大規模修繕をリードしようとすると、業務を辞退しているそうです」

その後、管理組合主導でコンサルタント会社を入れ替え、T建築事務所の見積りよりも1億円も安い工事費で大規模修繕を完遂している。

山岡 淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)
ノンフィクション作家

1959年愛媛県生まれ。ノンフィクション作家。『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』(集英社)で、第48回講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞。「人と時代」「公と私」を共通テーマに政治、医療、建築、近現代史と分野を超えて執筆。他の著書は、『後藤新平 日本の羅針盤となった男』(草思社文庫)、『気骨 経営者 土光敏夫の闘い』『神になりたかった男 徳田虎雄-医療革命の奇跡を追う』(ともに平凡社)、『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)など多数。一般社団法人デモクラシータイムス同人。