銀行が一等地をディスカウントでデベロッパーに

そして、2002年に小泉純一郎政権が、「都市再生特別措置法」を施行し、東京の旧国鉄貨物駅跡地の汐留や、六本木、新宿駅周辺、湾岸エリアなどを「都市再生緊急整備地域」に指定して、大規模開発の舞台を整える。

さらに民間デベロッパーのプロジェクトが同法の「都市再生特別地区」に指定されると、建物の用途や容積率、高さ制限といった建築ルールはいったん白紙に戻され、事業者が自由に変更できるようになった。これによってデベロッパーは青天井で高層化する力を得る。

そのタイミングで、金融機関は、塩漬けにされていた都心の一等地の所有権をディスカウント価格でデベロッパーに売り、不良債権を処理した。デベロッパーは東京の虎ノ門や芝浦、東雲、武蔵小山などにタワーマンションを次々と建設し、街の景観は一変する。

その後、タワーマンションの建設ブームは、首都圏から近畿圏、地方中核都市に及んだ。東京カンテイのストック調査(*)によると、2025年末時点で、全国に1602棟、42万1784戸のタワーマンションがあるという。

*「東京カンテイ、全国における超高層マンションの供給動向&ストック数について調査」(2026年1月29日)、株式会社東京カンテイ

こうして増えたタワーマンションが、軒並み大規模修繕の時期を迎えているのである。

【図表】2026年上半期、全国人気新築マンションTOP10ランキングの上位3つもタワマン
不動産・住宅情報サービス『LIFULL HOME'S』調べ

数十億円を費やす大規模修繕

一棟に数百戸から1000戸が入るタワーマンションの大規模修繕費用は、数十億円規模に上ることも珍しくない。その莫大な修繕積立金を狙って、外部の事業者が管理組合にさまざまな手を使ってアプローチしてくる。

たとえば、東大阪の施工会社グループは、東京湾岸に立つ2000戸以上のタワーマンションの管理組合に入り込んでいる。筆者が独自に入手した資料では、グループ内の会社社長が、このタワーマンションの住戸を、関西の地銀の融資を受けて買ったのは2023年8月下旬。管理組合が大規模修繕に向けて施工会社の公募を始める3カ月前だった。地銀は社長が購入した住戸と土地に1億1000万円の抵当権をつけている。

タワーマンションの区分所有者の仲間入りをした社長は、管理組合の理事に就き、大規模修繕の検討に加わる。大規模修繕の元請けに(公正取引委員会の立ち入り検査を受けた)マンション施工の大手が入り、その下に東大阪グループの社員たちが滑り込んでいる。

このタワーマンションの大規模修繕費用は約50億円ともいわれている。もし工事費の「水増し」や「中抜き」、「リベート」が発覚したら、かかわった者は当然、罰せられる。

タワーマンションに触手を伸ばすのは施工会社だけではない。大規模修繕の設計コンサルタントも管理組合に接触してくる。