戦前に戻るかのような改正皇室典範
10月に施行される改正皇室典範は皇族数の確保を目的としているものの、旧宮家の人々が皇籍を離れてから、すでに80年近い歳月が流れている。
その最初の世代は、皇族であった時代を幼い頃に経験しているかもしれないが、それ以降は、すでに2代か3代にわたって一般国民としての生活を送っている。
旧宮家の人々が皇族であったのは、はるか昔のことである。そうした人々が改正にあたって持ち出されてきたのは、あたかも戦前の体制に戻るかのようである。そこに、未来を感じさせる要素は少しもない。
皇室典範の改正において中心的な役割を果たしてきた自民党副総裁の麻生太郎氏は、リヒテンシュタインの改正報道について、どのように考えることだろうか。
麻生氏は、「日本とヨーロッパでは事情が違う」と考えるかもしれない。
だが、日本の皇室は、ヨーロッパの王室と密接な関係を結んできた。アジアにも王室はあるが、近代以降、ヨーロッパの王室を日本はそのモデルとしてきた。いまや、天皇や皇族がヨーロッパを訪問した際には、王位(皇位)継承をめぐる違いについて内外で報じられてもいる。ヨーロッパにおける変化は、決して日本と無関係ではないのだ。
早くも失敗が見込まれる「養子案」
麻生太郎氏は、それについて困惑しているかもしれないのだが、改正皇室典範の施行が2カ月後に迫るなか、旧宮家からの養子案は早くも失敗の可能性が出てきている。
何より、養子案は国民の支持を得られていない。養子案を強く支持してきた産経新聞の7月の調査では、賛成が反対を大きく上回ったものの、毎日新聞の6月の調査では、反対のほうが賛成よりも多かった(毎日新聞6月22日付)。
しかも、改正案成立以前に、かなり重要なことがあった。今上天皇は、6月にオランダ・ベルギー両国を訪問するに先立って行われた記者会見で、それが「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と語った。この発言については、天皇が養子案に賛同していないものとも受け止められている。なぜなら養子案について、国民の十分な理解が得られていたとは言い難いからだ。
さらに秋篠宮は、8月13日、パラグアイ訪問を控えての記者会見で、改正皇室典範について問われ、「先般、天皇陛下が話されたことももっともだと、その通りだと私は思っています」と語り、天皇と同意見だということを表明した。しかも秋篠宮は、女性皇族の役割について聞かれた際に、「私は女性、男性の区別というのはないというふうに考えています」とも語った(朝日新聞8月13日付)。この発言は、皇位継承のことについても、女性を排除しないことに通じるものである。