経済面で“都合よく”使われる親
数字の面を見れば、たしかに納得できよう。悪い言い方をすれば、祖父母が孫を経済面で支える存在のように頼りにされている、そう見えてしまいかねないからである。ただ、ここで考えなければならないのは、先に見たロッテの調査にある「遠方」という表現である。どこまでを「遠方」と捉えるのか、この点が難しいのではないか。
たとえば、社会学者の松川尚子氏は、〈近居〉、すなわち、近くに住んでいる祖父母が孫の世話を引き受けている状況に着目している(松川尚子『〈近居〉の社会学 関西都市圏における親と子の居住実態』ミネルヴァ書房、2019年)。重要なのは、一緒に住む=同居ではなく、小一時間ほど離れた近くに住むほうを選ぶ子ども世代の多さである。
近畿圏を対象にした松川氏の調査によれば、高度経済成長期以降のニュータウンの増加に伴い、祖父母世代と子ども世代の居住地が近くなり、さらに、「実家との距離」を考慮する割合が増えている。
子どもと孫が、都市部から「遠方」の実家に帰省する。祖父母世代は、わざわざ遠いところから来た孫を歓待しなければならない。すると、身も心もお財布も「孫疲れ」する。たしかに、いまもなおそうした例が多数なのかもしれない。それでも、松川氏の調査にあるように、そうした伝統的な帰省とは異なる実態も増えてきているのではないか。
東京一極集中が「帰省」の意味を変えた
実際、日本では、首都圏への人口集中が進んでいる。日本経済新聞によれば、「首都圏への人口集中は右肩上がりで、(20)30年度には27.6%に高まる見通しだ」という。この傾向は、OECD(経済協力機構)加盟国の6割で首都圏への人口集中が和らいできているのとは対照的で、首都圏への一極集中が止まらない。
日本国内の「都道府県間移動者数」は、1950年代後半から1970年代前半までの上昇傾向から、ゆるやかに減少傾向が続いており、2020年の調査ではピーク時の4割ほどの525万5721人だった。東京圏は9万9243人の転入超過であり、大阪・名古屋の他の2大都市圏の転出超過を横目に、増加を続けている。都道府県をまたいで移動する人が少なくなる中でも、都市圏、とりわけ東京に移り住む人は増えている。
こうなると、「遠方」に孫を連れて行く、という「帰省」の姿もまた変わってきているのではないか。つまり、「近居」している祖父母世代の住まいは、普段の通勤・通学よりは「遠い」ものの、同じか、もしくは都市圏にいる場合も少なくないと見られる。帰省が特別な出来事ではなくなり、祖父母に期待される役割が日常のなかで増えている可能性がある。ここに「孫疲れ」の要因の一端が垣間見られよう。