「周辺の知識」を得るチャンスがある
電子辞書で言葉を検索すると、その言葉だけがピンポイントで表示される。すぐに「わかる」という点では優れているが、それ以外のものは出てこない。一方、辞書なら、例えば「さ」という字が最初にくる言葉なら、サ行のページをめくるところから始まる。すると、目当ての言葉が見つかるまでにいろいろな言葉が目に入ってくる。また、目当ての言葉のまわりには、それに近い言葉がたくさんあることに気づく。
このように、その言葉を探す過程でいろいろなものが目に入ってくる。この経験が低学年の子どもには重要だと考える。
くり返すがデジタルがよくないというわけではない。だが、電子辞書ではその周辺の知識を得るチャンスを減らしてしまう。これからいろいろなことを知っていく子どもには、答えを早く見つけることよりも、広い視点を持たせるほうが、その後の人生を豊かにするはずだ。
「好奇心を見る問題」を解く力
昨今の中学受験の問題は、知識の確認ではなく、受験生の好奇心を見る問題が多い。特に難関校では、塾で習ったことのない初見の問題を出してくる。こうした問題を前にしたとき、「こんなに長い文章を読めない」「習っていないから解けない」とあきらめてしまう子は、振るい落とされてしまう。どんなに長い問題文でも、初めて見る内容でも、「まずは読んでみよう。そこに何かヒントが隠されているはずだ」と好奇心を持って読み進めていけるか。そして、自分の手と頭を動かして考えることができるか。こうした姿勢の根底には、「自分の手を動かして調べる」「自分で書いて覚える」「自分で書きながら考えを整理していく」という紙ベースの経験が必要になる。
これからの中学受験の学習は、「計算や知識の確認はデジタルで」「思考は紙で」とバランスが大事になってくるだろう。ただ、中学入試そのものがデジタル化することはないと考える。検定試験や能力テストなどではCBT(コンピューターを使った試験方式)が進められているが、「何を知っているか」よりも「どのように考えて解いたか」を重視する中学受験では、思考の跡が分かる「紙」が欠かせない、そう思っている。

