高学歴な父の「落とし穴」
中学受験に「親の学歴はどのくらい影響を与えるのか」という質問をよく受ける。結論から言うと、親の学歴が高いからといって、有利に働くことはあまりないと感じている。むしろ、親が高学歴のために、子供を苦しめてしまうケースは少なくない。近年、特に悪目立ちしているのが、自身も中学受験を経験し、難関中高一貫校から難関大学へ進学した、いわゆる高学歴の父親の存在だ。
ひと昔前までは、中学受験といえば、母と子の二人三脚が主流だった。しかし、10年ほど前から公立不信の波が押し寄せ、首都圏では中学受験者数が急増。そんな中、コロナ禍でリモートワークが広がり、これまで子供の受験にノータッチだった父親が関与するようになった。
子供の受験に父親が積極的に関わることは、とても良いことだと思う。しかし、そのやり方を間違えると、母と子が疲弊する。特に高学歴な父親がやりがちなのが、自身の成功体験をそのまま子供に強制してしまうことだ。
親世代とは入試問題が大きく違う
今、小学生の親世代にあたる40代が小学生だった頃、つまり約30年前の中学受験は、知識の多さと処理能力が重視されていた。そのため、たくさんの問題を素早く解く力をつけるためのトレーニングを行うことが受験勉強だった。このやり方は大学受験でも通用した。そのため、難関中高一貫校から難関大学へ進んだ高学歴の父親たちは、わが子の受験でも同じように、大量の問題をくり返し解かせようとする。自分の成功体験が絶対だと信じているからだ。
しかし、近年の中学受験は、思考力や記述力を問う問題へとシフトチェンジしている。つまり、親世代の中学受験とは、入試問題の質が大きく異なっているのだ。ただ、知識量や解き方のテクニックは以前よりも易しくなっているため、すでに多くの解き方や考え方を知っている大人からすれば、簡単に感じるものもある。そして、いつまでも成績が上がらないわが子を前に、「なぜこんな簡単な問題が解けないのだ」と責め立てるのだ。
さらには、わが子の成績の低迷の原因は、「母親の管理が甘いからだ」と妻に怒りの矛先を向ける父親もいる。こうなってしまうと、「威圧的な父親」と「萎縮する母と子供」という構造になりやすい。今、家庭教師界でもっとも頭を悩ませるのは、この手のパターンだ。


