「チームの喜び」を聞いたときに見せた応募者の本性

実際に質問が機能した例を紹介します。私が以前担当したある面接でも、まさにこの問いが自己中心的な本質をあぶり出すのに役立ったことがあります。その応募者は、チームで仕事をして嬉しかったことを聞かれても、「自分がこれだけ数字を上げた」「自分の企画が評価された」と自身の功績の自慢に終始し、周囲のサポートやメンバーの活躍については一切関心を示さなかったのです。他者への共感や感謝が著しく欠けていると判断し、採用は見送られました。

真に驚くべきはその後です。落とされた本人が会社の人事に対し、「あのような意図不明な質問で合否を決めるなど何事だ」と猛抗議のクレームを入れてきたのです。彼は対話としての質問を、自分の有能さをアピールするための「テスト」としか捉えられず、思い通りの結果にならないと周囲を攻撃する人物だったのです。このクレームによって、不採用の決断が正しかったことが証明されました。

しかし現実には、多くのミドル管理職が目先の業績目標に追われるあまり、「多少性格に難があっても、数字を稼いでくれるなら……」とこうした人物を甘やかし、組織に招き入れてしまいがちです。その一瞬の妥協が、既存の誠実な社員を絶望させる引き金になります。

だからこそ、採用が大切になります。あえて実績の数字から離れた問いを投げてみる。そこで見せる反応こそが、組織を壊すリスクを未然に防ぎ、理念を共にする仲間を迎えるための確実なリトマス試験紙となります。

スマイルマークが描かれた紙を顔の前に持つビジネスマン
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最強のチームは「能力」ではなく「魅力」で作られる

組織のパフォーマンスを最大化しようとする際、多くのリーダーが「高い専門性やスキルを持つ人材を集めれば最強のチームができる」と誤解しがちです。しかし、どれほど能力が高くても、社長や上司の「お気に入り」という主観的な理由や、数字の強さだけでメンバーを抜擢すると、現場に不和が生じてチームは機能不全に陥ります。なぜなら、最高の成果を生み出すチームの基盤は、能力の高さではなく、お互いが引き込まれ、信頼し合える「人間的な魅力」や「関係性」にあるからです。

チームに新しいメンバーを迎える前に、リーダーが何より重視すべきは、既存のメンバーが「この人と一緒に働きたい」と思える魅力があるかどうかです。他者を尊重し、傾聴し、共に高め合える。そんな魅力を持つ人が集まることで、初めて職場に「心理的安全性」が宿ります。誰もが失敗を恐れずに挑戦でき、率直な意見をぶつけ合える安心感があってこそ、個人の能力は掛け算となって発揮されるのです。

スキルは入社後の教育や経験でいくらでも伸ばせます。しかし、周囲を惹きつけ、安心感を与える魅力は、一朝一夕に育てることはできません。チームビルディングの主役は、個人の派手な実績ではなく、目に見えない信頼のネットワークです。「魅力」を最優先にチームを作る。これこそが、AI全盛時代にも揺るがない、最強の組織風土を醸成するための鉄則です。

加藤 芳久(かとう・よしひさ)
組織変革コンサルタント

リーダー育成と組織変革を得意とする。「理念型育成®」を日本で初めて開発・体系化した人財育成の専門家。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。大学卒業後、大手旅行会社、コンサルティング会社を経て、2016年に加藤経営を設立。2022年にファイブベイ(FiveVai)設立、取締役副社長兼CHO(チーフハピネスオフィサー)に就任。著書に『お客さまの9割をリピーターにする33のしくみ』(KADOKAWA)、『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』(かんき出版)がある。千葉県千葉市生まれ。