「女性・女系天皇」を白紙撤回した政権

レジームという言葉はフランス語で、体制や制度、構造を意味する。安倍氏は、戦後レジームを、「憲法を頂点とした、行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組み」と定義した。

現在の体制、レジームは、日本が戦争に敗れ、連合国による占領という状況のなかで押しつけられたものであるというのが、安倍氏の認識であった。

安倍氏には、『美しい国へ』(文春新書)という著書があるが、美しい日本とは、そんな戦後レジームから脱却した国家のあり方を示していた。

2017年3月、首相在任中の安倍晋三氏
2017年3月、首相在任中の安倍晋三氏(写真=米国国務省/PD US DOS/Wikimedia Commons

安倍氏の立場からすれば、戦後、旧宮家が皇室から離脱したことも、連合国に強いられてのことで、戦後レジームの一つの象徴ということになる。

もちろん安倍氏も、天皇や皇族のあり方を、戦前のようにしたいとまでは考えていなかったであろう。だが、小泉政権下の有識者会議が「女性・女系天皇」を容認する提言を行ったことを、第1次政権の時代に白紙撤回している。

安倍政権が怖れ続けたモノとは何か

現在の上皇が生前退位の意向を示したのも、安倍政権の時代だった。安倍氏は、そうした上皇の意向に対してひどく慎重な姿勢で臨んだ。

皇室典範では、天皇は終身とされ、退位を認めていなかったからで、その規定は戦前の旧皇室典範を引き継いだものだった。

その際に、皇室典範の改正がなされず、一代限りの特例法で退位が実現されたのも、安倍氏が、退位が制度化されることを怖れたからだった。天皇が自分の意思で退位するとなると、皇位の安定性が失われるというわけである。

そして安倍氏は、皇位継承者を確保するために、旧宮家の皇室への復帰、ないしは養子による復帰を主張した。

2020年9月に体調不良で首相を退く直前にも、安倍氏は、安定的な皇位継承を議論する有識者会議の召集を当時の官房長官で、次の首相となる菅義偉氏に強く求めた。その有識者会議の報告書には、女性宮家の創設とともに旧宮家の養子案が盛り込まれたのである。

麻生氏としては、安倍氏が銃弾の犠牲にならなければ、現在の国会での議論で主導的な立場をとったに違いないと考えていることだろう。

そうした盟友の遺志をなんとか活かしたい。麻生氏は、このように2人の死者の言葉に従って行動しているわけである。

しかも、そればかりではない。