子どもは「やらかす」のが当たり前

――家庭を安全な場所にするための具体的なポイントを教えてください。

親御さんにはまず、「子育ての前提を少し見直してみませんか」とお伝えしています。

親として、問題を起こさない子、失敗しない子に育ってほしいと願うのは自然なことですが、子どもは本来、試行錯誤しながら成長していく存在です。うまくいかないことや、失敗の経験は避けられません。

大切なのは、失敗をさせないことではなく、失敗した後にやり直せる環境や関係性を整えておくことです。親との信頼関係があるとき、子どもは大きく道を外れることを躊躇ちゅうちょしますし、仮にうまくいかないことがあっても、そこから立て直していこうという思いを持つことができます。

子どもが親に話さなくなる背景には、「これを言ったら怒られるかもしれない」「がっかりされるかもしれない」「正解を押し付けられるかもしれない」といった不安があります。

だからこそ、未熟であったり、誤っていたり、大人から見ると危なっかしくても、それも含めて、子どもをそのまま受け止めること。すぐ大人が思う通りに動かそうとするのではなく、その時点の子どもの状態を認めることが、子どもと関係を築く上での土台になるのです。

親子の「最上位の目標」を確認する

――親がそのまま認めることを意識すれば、必然的に子どもとの関係も変わっていくのでしょうか。

関わり方が変わると、関係は少しずつ変わっていきます。今回のケースでも、もし親御さん主導で「警察に連れて行こう」と強く介入していたら、本人はきっと「親に突き放された」と受け取り、やり直そうとする気持ちにはならなかったかもしれません。

一方で、自分で変わると決めたからこそ、同じ警察や児童相談所の関わりであっても、押しつけではなく「支え」として受け取ることができるようになります。

ただ、その背景には、親御さん自身の大きな葛藤もありました。お父様ご自身、厳しく育てられてきた経験から、「子どもは強く厳しく叱るべき」という考えを持っておられました。そこで私が「その関わりについて、今振り返ってどうお感じになりますか」とお聞きすると、「本当は辛かった」という思いに気づかれました。

さらに、「最終的に、お子さんとどんな関係でいたいですか」と問いかけると、「子どもが大きくなって、『親父、一緒に酒飲もうよ』と言ってくれる関係でいたい」という言葉が返ってきたのです。

このように、親子としての「最上位の目標」が共有されると、子どもへの日々の関わり方も自然と変わっていきます。

「子どもをどう変えるかではなく、どんな関係を築いていきたいのか」。その問いに立ち返ることが、子どもとの関わりを見直す大きな手がかりになるのです。

正月を祝う家族
写真=iStock.com/visualspace
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