世間体か、わが子との関係か
――大きな決断ですね。親御さんとはどのようなコミュニケーションをとられたのですか。
親御さんには、以前から「彼との関係を作ることを優先したいので、まずは見守っていてほしい」「帰ってきたときは、指示や注意よりも、お子さんが安心できる関わりを大切にしてください」とお伝えしていました。
その上で、本人が自ら交友関係を見直し、児童相談所の支援も受けながら環境を変えたいと考えていることを伝えると、お父様は「そんなことをしたら、周りからどう見られるか」と、強い戸惑いと抵抗を示されました。その思いは、とても自然なものだと思います。
そこで私は、「世間からの見え方と、これからまだまだ続くお子さんとの関係のどちらを大切にしたいのか」を、お父様と一緒に考えていきました。
すぐに答えが出るものではありませんでしたが、話し合いを重ねる中で、ご家族の中でも少しずつ気持ちが整理されていきました。
最終的には、お母様が「私たちだけで抱え込まず、一度そういう所に任せましょう」とお父様に伝えてくださり、ご家族として支援を受ける形で合意することができました。
その後は、児童相談所や警察などの関係機関とも連携しながら、本人を支える体制を整えていきました。私自身も関わりを続けながら、環境が変わる中で本人が少しずつ生活を立て直していく過程を見守りました。
その結果、時間はかかりましたが、問題行動を理由に関係を断ち切るのではなく、家族や学校、関係機関が本人との関わりをつなぎ直していく中で、彼は再び学校に戻ることができたのです。
誰とでもつながる時代の親の心がけ
――今はスマホで悪い大人と直接つながってしまう時代ですが、子どもを守るために親が心がけるべきことはありますか。
子どもがそうした場所に行ってしまうケースは、家庭や学校の中で「自分の居場所がない」と感じていることが少なくありません。
家の中に、責められることなく自分をそのまま受け止めてもらえる感覚があるとき、子どもは外の世界に居場所を強く求めずにいられます。一方で、家庭が安心、安全な場所でなくなるとき、別の場所に自分の居場所を探そうとなりがちです。
今回のケースでも、本人が学校の保健室に顔を出していたのは、「誰かとつながれる居場所がほしい」という思いがあったからだと感じています。「大人は信用できない」と言いながらも、彼にはどこかで信頼できる大人との関係を求めているふしがありました。
子どもは、ある日急に大きく道を外れるわけではありません。迷いながら、揺れながら、少しずつ、していいことと悪いことの境界があいまいになっていくのです。
だからこそ、遅刻が増えたり、持ち物や服装が急に変わったりするなど、子どもが日常の中で見せる小さなサインに気づくこと。そして、大人の正義を押し付けることなく話を聞ける関係性があることが大切です。
誰も、子どもを完璧に守ることはできません。それでも、子どもが安心して帰ってこられる場所が家の中にあることは、子どもにとって間違いなく支えになります。そうした小さな関わりの積み重ねが、結果として子どもを守る大きな力になるのだと思います。


