回復した彼は「結婚しよう」

翌日、玲子はいつも通り売店を開け、昼飯を食べ、夕方売店を閉めて病院に行った。渋谷は起きていて恥ずかしそうに目の下まで布団を引っ張った。「どう、苦しかった?」と聞く玲子に首を横に振った渋谷は突然「結婚しよう」と言った。「俺、子供嫌いなんだ」とも言った。「でも、前の男は、子供がどうしてもほしいといって私と別れた」「フロクより本誌が大事。子供か君かといったら、俺は子供を捨てて君をとる」。玲子は泣いた。

二人の新居は家主に内緒の間借りだった。飲んだくれてあまり家に帰らない玲子の独身の叔父の家に黙って住んだのだ。たまに叔父は帰ってきたが、3年間ついに隣りの部屋の新婚夫婦に気が付かなかった。