秋篠宮家が天皇家になることで起きること

上皇の生前退位についての有識者会議が行われた中で、政府高官から、秋篠宮は「皇太子の称号を望んでおらず、秋篠宮家の名前も残したい意向だ」という説明があったということについては、前にふれた

そこで秋篠宮は「皇嗣こうし」と呼ばれるようになったのだが、皇太子の称号を拒んだところには、自らは天皇に即位する気持ちがないことが示されている。たしかに、今上天皇との年齢差は6年もない。たとえ即位しても、短い期間に終わる可能性が高い。

現在の制度では、それでも今上天皇の次は秋篠宮になる。秋篠宮を飛び越えて悠仁親王が天皇に即位するには、皇室典範を改正するなり、特例法を作るしかない。

そうしたやっかいな問題はあるにしても、悠仁親王が天皇に即位すると、その時点で、秋篠宮家は消滅する。天皇家になるからである。それでも、秋篠宮家を残そうとするなら、旧宮家からの養子に秋篠宮家を継がせるしかない。そうなれば、秋篠宮の意向が生かされる。その点でも、養子が秋篠宮家に入ることは十分にあり得るのだ。

2019年1月2日の、 新年恒例の一般参賀
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秋篠宮家が3つの家になる可能性

さらに、である。養子案とともに、結婚した皇族女性が皇室にとどまる女性宮家の創設も、国会での議論の対象になっている。それが実現されたら、佳子内親王が結婚して新たに宮家を創設する可能性が出てくる。

そうなると、現在の秋篠宮からは、天皇家、秋篠宮家、そして佳子内親王の宮家の3つの家が生まれる。天皇家にも、養子が継ぐ秋篠宮家と佳子内親王の宮家にも配偶者がいて、さらに子どもも生まれれば、かなりの陣容になる。それを「秋篠宮朝」と呼んだとしても、決して間違ってはいないはずだ。

そうなれば、皇族数の確保はもちろんのこと、皇位の安定的な継承についても、当面それを心配する必要はなくなる。それがもっとも有効な解決策である。

ただ、歴史を振り返ったとき、傍系での継承は、皇室が重大な危機に直面していることの象徴である。保守派は男系男子での継承には強いこだわりを見せても、そうした危機にはほとんど関心を向けてこなかった。

果たしてそうした「秋篠宮朝」が国民の支持を得られるかと言えば、それはかなり難しいであろう。「愛子天皇」待望論を唱えている人々を落胆させることにはなるし、何より、現在の秋篠宮家の力があまりにも強くなりすぎるからである。

皇位継承の歴史は、皇位をめぐる直系と傍系、つまりは兄と弟の対立でもあった。ほとんど直系である兄がそれに勝利してきた。「秋篠宮朝」の成立は傍系の弟の勝利であり、画期的な出来事である。今の政治はそれに手を貸そうとしているのである。

島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家

放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。