「ネズミの死体」を処分する覚悟はあるか?
「買うほうも空き家の色々な問題をすべて自分で引き受けないといけないから責任重大です。私のこの家(三軒茶屋の自宅)も最初はネズミの死体を処理したほどですし、壁をぶち抜いて処分するお金もかかります。この家は徹底的にこだわったので、リフォームに1500万〜1600万円ほどかかりましたが、リノベーション専門の会社に依頼すれば、意外と安くすむ場合も多いです。
戸建てに関しては地震対策や断熱対策(場合によっては水道・電気工事)など、インフラにあたる部分は100万〜600万円は見ておいたほうが良いと思います。その上で、照明やインテリアなど、自分の好みの内装にリノベするために合計1000万円ほど必要でしょうか。1000万円あれば、かなり色々できると思います。
空き家のマンションは基礎がしっかりしていることが多いので、全て自分でDIYして200万〜300万円、というところでしょう。総じて、戸建でもマンションでも、リノベ代に1000万円は用意しておいた方が安心かもしれません」(ウォールマン氏)
いくら経済的だといっても、当然、空き家を住める場所にするためには根性が必要だということか。
「ただ、新築にしても欠陥住宅はありますし、住居にリスクはつきものです。それに、自分でDIYをすればどんどん楽しくなっていきますし、家への愛着も湧くようになります。家のために時間をつくることができる人には、DIYをオススメしますよ。本格的にリノベーションに取り組みたい人は、いきなり自分でやるのではなく、ある程度の手順を専門家から学ぶとハードルが低くなると思います」(ウォールマン氏)
900万戸超の空き家をどうする?
アントンさんの取り組みが注目されるのは、単に現役世代にオルタナティブな暮らしの選択を提示しているという理由だけではない。日本の社会問題である空き家問題解決の担い手としても熱視線が注がれているのだ。
総務省によると、日本には空き家が900万戸以上あり、総住宅数に占める割合はなんと13.8%。少子高齢化でこの数はさらに増えると予想されている。
2023年に空家法が改正され、空き家を放置していた場合の税的ペナルティが強化されることになった。数々の空き家を購入してきたアントンさんは日本政府の対策をどう見ているのか。
「まず、基本的に行政であっても『他人の家』の細々とした相続の問題に触れたくないのが現実です。中には相続をめぐって骨肉の争いをしている家もあるでしょうから。現在、空き家対策は市町村が縦割りで対応しているのが現実ですが、国として中央集権型のシステムをつくり、どこにどれくらいどのような状態の空き家があるのか、一目で確認できるようにすべきです。市町村によって空き家問題の取り組みにバラツキがあるのが現状で、これを改善すべきでしょう。また持ち主が簡単に空き家を手放せる仕組みを創出すべきです。デジタル先進国のスウェーデンなら、そういうシステムをつくれたと思います」(ウォールマン氏)