夫の態度が変化し離婚が成立

私が連絡を取って離婚の話を切り出すと、やはり夫は最初反対しましたが、内弁慶なのか、弁護士を相手に激しく怒鳴ることはありません。徐々に「不仲だったし、離婚も仕方ないのかもしれない」という態度に変わっていきました。

最終的に、夫は離婚に同意して、適正な額の財産分与や年金分割について取り決めをして、離婚しました。

思いがけないきっかけで家を出られることも

モラハラで離婚を考えているものの、離婚できなくて何年、あるいは何十年も悩み続けているという人は少なくありません。

その多くは、相手が離婚や別居を許してくれないことが一番の理由になっています。

ただ、この事例のように、思いがけないきっかけで家を出られることがあります。子どもの進学への付き添い、夫の単身赴任など、いろいろなケースがあります。

介護自体は決して楽なことではありませんが、A子さんのように、結果として人生の転機になる場合もあるのです。

もちろん、そういったきっかけが何も起こらないままということもあります。その場合は、自分で家を出るという選択肢を具体的に考える必要があります。

別居が大きな一歩になる

なお、離婚や別居に強く反対する人は、「まだ相手が好きだから」「修復したいから」ではなく、「離婚されたら自分が悪者になる」「相手の言うことを聞きたくない」という理由で反対していることがほとんどです。

そのため、別居して物理的に距離ができると、相手への執着が薄れ、態度がトーンダウンしていくケースがよく見られます。

離婚を考えているけれど動けないという人にとって、まずは別居が大きな一歩になります。

家庭という狭い世界で視野が狭くなると、不仲なのに離れない、離婚しないと意地を張って、ますます不仲がこじれていってしまいます。

A子さんの事例は、お互いに距離を置くことがどれだけ大事か、よくわかるケースです。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士

北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。