なぜ環境が変わると心が健康になるのか
なぜ会社を変えるだけで、これほどまでにメンタルヘルス不調が改善するのでしょうか。私は、人間関係こそが「ストレスの最大要因」であり、同時に「最大の保護因子(守り手)」でもあるからだと考えています。
たとえ同じ仕事量、同じ難易度のタスクでも、周囲に支えてくれる人や信頼できる人が一人いるだけで、脳が感じるストレス負荷は劇的に軽減されます。「評価されている」「尊重されている」という感覚が、自分の存在価値を肯定し、「有意味感(自分や自分の仕事には意味があるという感覚)」を高めます。この有意味感は、後述する「首尾一貫感覚」の1つです。
また、良い環境に身を置くと、「自分はダメな人間なのだ」という前職で植え付けられた歪んだ認知(考え方の癖)が、周囲のポジティブなフィードバックによって自然と修正されていきます。安定した人間関係の中で働くことは、認知の歪みを解消し、自分を信じる力を取り戻すプロセスそのものなのです。
「失敗しない転職」のために意識すること
これから転職を検討されている方にはまず「首尾一貫感覚」を理解していただきたいです。
首尾一貫感覚とは、ストレスフルな状況でもしなやかに生き抜く力であり、「自分の置かれている世界には一貫性があり、筋が通っている」と感じられる感覚のことで、次の3つの感覚で構成されています。
・把握可能感(だいたいわかった):自分の置かれている状況や、今後の展開をある程度予測できているという感覚。
・処理可能感(なんとかなる):自分に降りかかる問題に対しても、周囲の助けを借りるなどして対処できるという感覚。
・有意味感(やりがいがある):自分の人生や仕事に起こることに意味があり、苦労してでも取り組む価値があるという感覚。
転職活動においては、この「首尾一貫感覚を高められるか」という観点の下で、次の3つのポイントを意識してはどうでしょうか。
① 「自分のストレスになること」を理解する
メンタルヘルスの視点から最も大切なのは、「自分が何に疲れやすいか」を言語化しておくことです。人間関係の摩擦に弱いのか、責任の重さに弱いのか、あるいは評価基準の不透明さに耐えられないのか。人によってストレスのもとは異なります。
「ここまでは許容できるが、これ以上は無理」という境界線を自分の中で明確に持っておくと、求人票や面接でチェックすべきポイントが自ずと見えてきます。